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SS置場6
転校生14 L
転校生つづき。この後暫く転校生は書かないと思います。











どこか緊迫した雰囲気で告げたキャスケットは ローの返事を待たずして ふっ・・・と力を抜いた

伝えたい、知ってほしかっただけだと言った彼は 本当にそれだけを目的に ローからの反応は期待していないようだった
(勝手に結論付けて満足してんじゃねぇよ)
一歩前に出たローに気付いて意識をこちらに戻すキャスケットの肩に手を掛ける
驚いた顔をする彼が反応を返す前に更に距離を詰めたローは そのまま何か言いかけたようにも見えるキャスケットの唇に
自分のそれを押し付けた

――これで 二度目だ

クリスマスの折りに不意打ちで奪ったそれに近いキス
(だがあの時とは状況が違う)
キャスケットの告白を受けてのキスはローの気持ちも同じだと告げる行為で、動かない彼の唇を舌でなぞる
ローのその動きに誘われたように緩んだ唇を割って更に深く唇を合わせた

肩を掴んでいた手は いつの間にか彼を抱き寄せ しっかりと腕に抱えていて
キスが深まるにつれ自然と瞼を閉じていたキャスケットもローの背に腕を回している
暫くそうやって口付けを交わした後、2人は ゆっくりと身を離した


少し息を弾ませたキャスケットが戸惑ったような顔で立ち尽くしている
「オ、レ・・・」
うまく言葉が纏まらないのか 言いかけて途切れたまま 彼は ふるりと首を振った
ならば先にと キャスケットの言葉を待たずにローは口を開いた
「言うだけで満足する気か。 生憎、俺はそうじゃねぇ」
わかってんだろ? さっきの、キスの意味。
そう聞いてやれば顔を赤くして俯くキャスケットも互いの気持ちを知っている
今までは確証が無かったのかもしれないがここまではっきり行動に移せば疑いようがない
「告げたら反応があるとは想定してなかったのか?」
「か、考えてなかった・・・」
へにょりと眉を下げて答えるキャスケットはもういつもの雰囲気に戻っていて 互いに顔を見合わせて ぷっと噴き出す
「抜けた事言ってんなよ。 だいたい、気付いてたんじゃねぇのか? 俺の気持ち」
聞かれて、目を合わせたキャスケットが恥ずかしそう視線を横に逸らす
「そうかなぁって、思うときも・・・あった」
照れ臭いのか、からかわれて拗ねた時のような顔であちこちと視線を彷徨わせるキャスケットに顔を寄せたローは
もう一度、気持ちを籠めたキスで彼の唇を塞いだ

「――好きだ」
再び 空気の変わり始めた部屋の中で彼の耳に言葉を注ぐ
「俺、も。・・・・ん、っ」
それまでの停滞を取り返すかの勢いで何度も唇を合わせる
2人が我に返ったのはキャスケットの母親が帰宅する時間の迫った時刻で、慌てて夕食の用意を始めるキャスケットの
邪魔をしないように離れたローは 夕食が間に合いそうなのを見定めると手を振って彼の家を辞した




そわそわと落ち着き無くその夜を過ごしたキャスケットだったが 幸い 母親も息子の様子が多少おかしいのは、
お通夜・葬式と過ごして何か思うところがあったのだろうと思ったらしい
何も言わずに、そっとしておいてくれた事でその日を遣り過ごしたキャスケットはローが夕食を食べずに帰ったのも
自分を気遣っての事だと気付くのと同時に、何度も繰り返した情熱的なキスを思い出して うわぁぁと枕に顔を埋めた
(ローが先に帰って正解だ。顔を合わせてたら絶対ボロが出た)
男友達だと思っていた相手と両想いになりましただなんてとても母親には言えない
いつか話す時もあるかもしれないけど、やっと今日通じ合った想いを、まだ 誰にも明かしたくなかった

(大切に、したい)
血の繋がった妹を亡くした事でキャスケットはナーバスになっているのだろう
"今日 手にした幸運を自分の胸の内に仕舞ってあたためておきたい"
自分達の新たな関係は さっき始まったばかりで 人に話す事で壊したくはないと思ったのは、恋をする身にはよくある事で
その日、母親に話さなかったキャスケットに罪はなかったと思う。
ただ、いつか話すという日を迎える前に、キャスケットの方でまた別の変化が起きた

「本格的に受験が始まる前で良かったと思うの」
そう前置きして始まった母親の話は まだ付き合い初めて間もない恋人のいるキャスケットには容易には
受け入れかねる内容だった




(きちんと笑っておめでとうと言えただろうか)
部屋に戻ってベッドに倒れ込んだキャスケットは つい先程の自分を思い返して眉を顰める

――母親に 恋人が居た

今になって考えてみれば 思い当たる事はあった
(母が、クリスマスに一緒に過ごした相手・・・)
あの頃から付き合いが始まっていたのかもしれない
それが結婚を視野に入れた付き合いだった事も、先程明らかになった
キャスケットが知らされたのは恋人の存在だけでなく彼の転勤と共に告げられたプロポーズもで
何も知らない母は "一緒に来てほしい" と話し、こちらに出来た友達には残念だけど転校する事になると告げた
(だって。 そんな・・・ ロー!)
離れたくない、と真っ先に思った
同じ国内とはいえ 頻繁に会える距離でもない母の恋人の転勤地は だからこそ彼等が結婚に踏み切ろうと思ったのだ
(その距離を、まだ学生の自分達が・・・?)
耐えられるのかと自問する前に離れたくないという思いの方が強い。
だからと言って この地に残りたいという理由をどう話せばいいのか
下手に一緒に行くのを嫌がると母の再婚相手を嫌がっているように思われるかもしれない
そもそもこちらに残るとしても再婚する母がマンションを引き払えばキャスケットの住む家は無いのだ
祖父母の家だとて小旅行にあたる距離。
どうすればここを離れないで済む――?

「・・・あ―――」
咄嗟に浮かんだ顔は ローと付き合う切っ掛けともなった父親の顔。
(何、考えてんだ! 駄目だよ、父のところは少し前に子供を亡くしてそれどころじゃない。娘を失った母親の傷口に
塩を塗るようなもんじゃないか。 そんな事、出来るもんか)
数日前にローと話した会話が脳裏に蘇る

『また引き取りたいって話も出てるのか?』
『まさか!すぐにそんな気になるような人なら幻滅する。奥さんの気持ちを考えてみてよ』
『分かんねぇぞ。気を紛らすのに環境を変えてみるとか。面倒を見る対象があった方が立ち直りも早いかもな』
父親の家族と顔合わせした事で養子の話が出ているかもしれないとローは言っていた
まさかそんな都合のいい事・・・と思いつつも、もし、そんな話が出れば自分はどうするだろうと考えてしまう
・・・母は悲しむかもしれない。でも、再婚相手が気に入らないのじゃなくて友人達と離れたくないのだときちんと話せば
分かってくれるはずだ
(最悪の場合、好きな人がいると話す事になるかもしれないけど・・・)
出来ればそれがローだとは告げずに済ませたい
結婚相手と息子がうまくいかないというよりも、息子の恋人が男だという方がショックは大きいに違いないのだから。
父親の家に行く事になったとしても父の新しい奥さんがどう思う事か。派手目の顔立ちの若い奥さんの憔悴した表情は
キャスケットにも見ていて辛く感じられた
(これ以上、あの人を傷付ける事は避けないと。)

あぁ、どうすればいいんだ・・・

一晩中思い悩んでよく眠れなかったキャスケットの顔は翌日、あっさりとローに"何事かあった"とバレた





「まぁ・・・おめでたいことだよな」
白状させられた後のローの一言目は母親への祝福の言葉で キャスケットも曖昧に肯く

「ん・・・ でね? そうすると、やっぱり転校する事に、なる・・・かも」
徐々に小さくなっていく声が最後には殆ど聞こえない程の大きさで かもじゃないかも、と付け足す
離れたくないんだという気持ちは言わなくても伝わってくる
放課後、一緒に話を聞いていた友人達もどうにもならない事態に顔を曇らせていた

二人が付き合っていることはこの親しい友人達には早々に話していた。一々口止めしなくても彼等は心得たもので
身内だけで居るとき以外は外ではその事に触れない。勿論そういう信頼関係にあるから話せるわけだが、だから
結局母親の再婚とその相手の転勤はローに話すと同じくして彼等も知る事となっていた

一同静まり返ったところで ローが徐に口を開く

「うちくるか?」
唐突な発言の意味を計り損ねてキャスケットが首を傾げる
その横では 得たり!と納得顔の友人達が口々に同意を示した
「いーんじゃね? ローの家なら部屋も余ってるし」
「はい?」
たまげたのはキャスケットの方だ
いや、普通に考えて無茶な話でしょう?と目を白黒させているのに友人共は"良い案だ"と言って誰も異を唱えないのだ
「そういや、おまえ うちに来た事なかったな」
ローの言葉を聞いて、あぁ、そうなのかと笑ったキラーが説明を始める
「こいつの家は希に見ない程の放任主義だし、親自身も忙しくて家を空けている事が多い。」
思い当たるだろう?こいつが 夕食がいらないだとか、帰りが遅くなるだとか、家に連絡を入れた事があったかと問われて
確かに無いと今更ながらに気付いてローが家庭の事を殆ど話さないのを思い出した
「キャスケットなら料理も出来るし掃除も結構マメだ。丁度いいんじゃないか」
などとペンギンまでが後押しする発言を述べるに至って、俄にその提案が現実味を帯びた事のように思えてきた
「家に居る時を捕まえて面通しすれば簡単にOK出すぞ、こいつの親なら」
どうやらキッドもローの親とは面識があるらしい
却って 息子の世話をよろしくと頼まれるんじゃねぇかと笑ったキッドに周囲もそうだなと話を続ける
「キャスケットの親のところへ挨拶に行くかもな。あの人の常識、なんかズレてるし」
「違いない。ありそうだ」
どんな人なんだ?!と眉を寄せていたキャスケットは それを聞いて、いや待て待てと割って入る
「・・・って、それじゃまるでローの家に婿入りするみたいじゃないか!」
「安心しろ、漏れなく婿じゃなくて嫁だ」
「?!」
たった今、聞き捨てならない事を聞いた気がする
冗談めかしてはいるが軽口に紛れて真実を話す事も多いローだから油断出来やしない
「それ、冗談だよね?」
「さぁ?」
大事にしてやるから安心して嫁に来いと耳元に囁かれて くすぐったさに首を竦めながらキャスケットは叫んだ

「安心できなぁい!」

どっと湧いたキッド達がやれやれと手を振る
「あぁもう、おまえら2人で勝手にやってろ」
「ちょ、なんで!真面目に相談してんだよ、いちゃついてるんじゃないのに!」

騒ぐその姿は 初めの重苦しい雰囲気が払拭され、今すぐの事じゃない、転勤までの間にどうにか
話し合えるかもしれないという望みを得て 肩に入っていた力の抜けた穏やかなものだった





今日は少し考えてみたいから。
そう断って 珍しく自宅前でローと別れた
家では極力 父親の話題は避けていたのだが、新しい伴侶を得た母に、かつての配偶者の話をしても、
もう、大丈夫だと思った
もし父親の元に行くのなら1度なりと母や父と顔を付き合わせて話す必要がある
仮にローの家にお世話になる事になったとしても、親権を持つ母親が遠く離れた土地に移るのなら
キャスケットの身元を引き受ける責任者は 近くに居る父になるだろう
母の再婚を報告する必要はなくても、それに伴うキャスケットの環境の変化は父にも話すべきなのだ

なにより、この地に別れがたい友人達がいて、母の再婚には賛成だけど自分はついていけないと
きちんと話すのが先決だった

ここに残るキャスケットがどこに身を寄せるのかは母の判断に任せるしかない。
(ローの家にお世話になるか決めるのは、その先の事だ)
父を含めての話し合いの席で 友人の家に来いという話もあるのだと明かすのがいいかもしれない
(その際には、ローの親とも顔合わせする事になるのかなぁ)
もし、彼の家に下宿するとなれば両親とも、ローの家族に会いたがるのは当然だから。
「・・・あ。 確か、みんな口を揃えて"変わり者だ"って言ってなかった・・・っけ?」

大丈夫かなぁ・・・

それまで避けていた両親の離婚と向き合う決意をしたキャスケットの、それだけが唯一の不安事項かもしれなかった








 転機と決意 その覚悟がもたらすもの









多分ローの親って、あの人。キャラ的にはシャンクスがいいんだけどなー、ハートクルーだと接点があの時だから
ちょっと違うんだよなー、原作での関係が。しかたないからあの人になるか。たまに他のサイト様でも見掛けますよね
そういえばうちでもドリームの方でキャラ当てはめバトンに親子役で登場してた!


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