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SS置場6
転校生13 L
すいません、絵茶ってたら更新が遅くなりましたー!久しぶりの転校生








「担任だ」

昼休みの教室で、いつもの如くの食事風景に異質な存在。
職員室で昼食中のはずの担任が 扉を開けて顔を出したのを見つけたローが珍しいなと呟いた

「あれ? もしかして、俺呼んでない?」
つられて入り口を見たキャスケットが首を傾げる
目が合った担任に"俺ですか"と自分を指さして合図したキャスケットは"そうだ"と肯かれてローと顔を見合わせた
「・・・何か、したっけ、俺。」
少し不安そうに呟いて席を立ったキャスケットは そのまま教室の外へと連れ出される
教室の外で話したのだろう彼が間を開けずに席まで引き返してきた時には 少し青ざめた顔色で表情を曇らせていた

どうしたよ、と目で聞くまでもなく、キャスケットの方から声を出す
「ごめん、俺早退する」
「何かあったのか?」
"・・・・・" と、少し言い淀んだ彼は ますます表情を暗くして
「妹が 亡くなった・・・って」
声を潜めてそう言って、明日どうなるか分かんないから お昼は自分で用意してと言い残して1人で教室を出て行った

どうやら学校を通して連絡があったのみで親が迎えに来た様子はない
キャスケットの携帯に直接連絡がなかったのは 父親の方からの連絡だからだろう
彼の両親は離婚している
父親の浮気が原因のその離婚で まだしこりを残している彼はもしかすると携帯の番号を教えていないか
或いは着信を拒否しているのかもしれない
(母親には 連絡が届いていないのかもしれないな)
なにせ キャスケットの妹とは何の血の繋がりもないのだから
・・・どちらにしろキャスケットが早退したり休んだりすれば耳に入るに違いはないのに。
(気まずい連絡は息子任せ――ってか。 気にくわねぇな)
母親に話すも話さないもキャスケットの判断次第という事かもしれない
多分、彼がその気になれば母親に隠し通す事も出来る
――優柔不断で、向かい合うべき時は出来る限り後に引き延ばす
浮気が場に流され本気にはまる、典型的なタイプ。
良い印象がないから点が辛くなるのは否めないが、それでも離婚に踏み切る勇気があったのは褒めるべきか
だがキャスケットの話す様子は泥沼を体験したようなニュアンスだった
(離婚自体が状況に流されての事か?)
午後からの授業中、つらつらとそんな事を考えていたローの携帯が振動する

『明日昼休みには間に合わないかもしれないけど午後から学校行く。』

律儀に連絡を寄越した友人は 少しは気持ちも落ち着いたのだろうか
推し量り兼ねている間に 再びそれが振動した

『一緒に帰ろう』
次に送られてきたメールでは 普段の習慣からすればわざわざ念押ししなくてもいい事を言ってきた
これはよほど気落ちしている
『当然だろ、ばーか』
家まで上がり込むつもりだと思いながら返信する
どうせこいつは母親の前じゃ気を使って泣き言なんて言えないのだから。
あの、気の良い友人は 出て行った父親の家庭で何を感じ何を思ったことだろう
(全部、吐き出させてやる)
自分はキャスケットにそうされるくらい信頼を得ていると自惚れてもいいだけの距離に居るはずだ
そう考えながら用済みの携帯をポケットに仕舞い込む
今頃 ローの返信を読んでいるであろう友人が眉を下げた情けない顔をしているだろうと予想が付く
(いつまでも水くさい遠慮で他人行儀な態度をとるつもりならこちらから崩すまでだ)
父親以外他人ばかりの中で泣くより自分達の傍で泣けばいい

覚悟しとけと呟くローの顔は必ずそうさせてやるという確信に満ちた笑みを浮かべていた






翌日学校に現れたキャスケットは思ったとおり赤い目をしていた
まだ赤ん坊だった彼の妹は それだけに半分しか血の繋がらないキャスケットとは交流が無かったはずだ
放課後、キャスケットの家に上がり込んだローのその質問に 案の定彼は "会ったのは昨日が初めてだ"と肯いた

「俺、あの家に行くつもりなんかなかったし、いくら血の繋がった妹だと言っても、まだ赤ちゃんだろ。
会いたいとか顔を見たいとか、思った事なかったんだ」
浮かない顔で話すキャスケットは それが罪のように思っているのかもしれない
「まだホントに小さくってさ。だから、まだ病気に抵抗する力が少なかった。あれくらいの小さな子って、
ちょっとの容体の変化であっけなく亡くなってしまうんだって・・・」
体力がないから仕方ないって。
亡くなった子の親族か父親から聞かされたのだろう。ぽつりと呟いたキャスケットの伏せた目から
すぅっと、透明な雫が流れる

「なんで。 会いに行こうって思わなかったんだろう。半分だけでも 同じ血の流れる兄妹だったのに。」
自分の事だけでいっぱいでさ。いつか会うかも知れないとか、そんな事を想像することすらしなかった。
あの子がどんな経緯で生まれたかなんて関係なかったのに。名前を聞く事すらしなかった。薄情な兄だよね。

ぽつりぽつりと語られる彼の気持ちは苦渋に満ちたものだった
おまえのせいで亡くなったわけじゃないだとか気軽に会うような関係じゃなかっただろうとか
今のキャスケットには大して慰めにもならない事しか浮かんでこないローは彼の話す言葉を静かに聞いていた

すん、と鼻を啜ったキャスケットが、手で涙の流れる頬を擦りながら 不意に顔を上げてローを見る

何かを訴えかけるようなその目に引き込まれて ローの方も じっと彼を見つめ返した
小さく震えたキャスケットの唇が ゆっくりと解かれる

「迷惑かもしれないけど、聞いて。」

そう言って 瞬いた真剣な目から 転がった雫を最後に膨れあがっていた涙が止まる


俺、ローの事、好きだよ。
言っておかなきゃ後悔すると思ったんだ



何も行動せずに後悔するのは嫌だと語った友人は、彼の口から聞く事は無いだろうなと思っていた一言を
真っ直ぐにローに伝えた








 知ってくれるだけでいい

貴方を想っていることを




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あきゅろす。
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