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SS置場6
吸血鬼パロ番外3 (L)
お題ったーSSSですが先日の吸血鬼パロ番外の番外編。ちょっと校正が甘いかもなので修正出るかもです










(あいつの考える事は分からない)

種族の違いと言ってしまえばそれまでなのだが、仮にローが人間だったとしても、きっとキャスケットには
理解出来ないに違いない

(それとも、同じ人間だったら 理解できる・・・のかな)

敵対し、命を狙っていたはずの自分を、どうした気紛れかあいつは助けた
そもそもキャスケットの怪我はローには関係ない。返り討ちにあったキャスケットが自らの手で命を絶とうとしたのを
喉に突き立てたナイフを持つ手を弾き あまつさえ怪我の治療までしたのは、相対していたはずのローだった

・・・もしかしたら キャスケットの体質に興味を持っただけかもしれないが。

キャスケットの母親は吸血鬼の"食事"の際に陵辱された結果、化け物の子を身籠もった
普通の胎児とは成長のスピードが違った為、胎内にある異質な命に気付くのが遅れ、また普通の妊娠であれば
その時点ではまだ堕胎出来たはずの胎児は無理に堕ろせば母胎に危険が及ぶ程に育っていて、
周囲に知らさず隠れて産み落とされたキャスケットはその場で里子に出されたと聞く

(穢された結果の子供なんて 見たくもなくて当然だ)
それも、半分は自分の血が流れているとはいえ、残りの半分は人以外の化け物とくれば 可愛さよりも恐れの方が
勝ってしまっても仕方ない

そうやって、生まれる前から否定されてきた自分の中に流れるもう一つの種族の血を キャスケットが認めたがらないのも
当然だろう

自分の出生の事を、己の身体の特質を、キャスケットが聞かされたのはまだ幼いうちの時分で、
母親を恋しがって泣く子供には随分と酷な事実を あっさりと告げた里親は特異体質の子供の養育に嫌気が差して
いたのだと思う
(当たり前だ。 こんな、呪われた血族)

――吸血鬼なんて、この世から居なくなってしまえばいい

キャスケットが彼等と敵対するハンターという生業に就いたのも、憎かったからだ
母を穢し、のみならず、己の血を受け継ぐ人間を生み出した相手が。

その奥底に 母への思慕の念があるのにはうっすら気付いてはいたが、キャスケットは敢えてその気持ちに蓋をした。
期待するだけ無駄なのだ
たとえ、ハンターとなったキャスケットが世界から全ての吸血鬼を討ち取ったとしても、会った事もない母がその胸に
キャスケットを抱いてくれる事はない
仮に、自分が人間の子だったとしても 陵辱した相手の子を愛せる女なんか居るはずがない

見も知らぬ父よりも、産み落として直ぐに捨てた母よりも、キャスケットは 何よりも自分の身を憎んでいた

(ハンターという危険を伴う仕事で命を落としたとしても 惜しいようなこの身じゃない)

無謀とも言える仕事ぶりは 皮肉な事にキャスケットの名を上げた
どんな無茶だと思える依頼も二つ返事で引き受け、なのに、誰とも手を組む事なく一人で仕事を片付ける。
便利屋とも取れそうな扱いだが、そのお陰で若輩者のハンターのキャスケットでも食うに困る事はなかった
"食べる" と言っても、勿論 人間と同じ食事ではあったが。


ローと出会ったのも、ハンターとして請け負った仕事の対象としてだった

(あいつ。 俺を、"吸血鬼にする"って言った)

身の程以上の相手は あっさりとキャスケットを薙ぎ倒した
倒れたキャスケットの上に馬乗りになったローは片手で首を押さえ付け、大して力を入れてる様子もないのに
それだけで床に縫い止める
相手の力量も分からない身の程知らずと馬鹿にした態度で嘲笑った男は 面白い事を思いついたと唇を歪めた

気が合うじゃねぇかと嗤ったローは、"仲間にしてやろうか" と言い出した

これで俺の命も終わると、心のどこかで安堵しながらトドメを待っていたキャスケットに、これ以上ない最悪の拷問。
(誰が、吸血鬼になんか)
ただのハンターへの戯れとは違う。 キャスケットにとって それは死よりも恐ろしい宣告だった
死にものぐるいで暴れているのに 男の下から抜け出せない
顔色を変えて嫌がった事も、男の逸楽を煽ってしまったのだろう。
どこか からかいの色を浮かべていた男の目に、少しばかりの本気が混じる

力では敵うはずがない
でも、キャスケットは どうあってもこの男の気紛れで ホンモノ になってしまうわけにはいかない

諦めない獲物をいたぶる貌で、首筋へと顔を近づけた男が 不意に動きを止める

『お前・・・仲間、か?』
『違うっ!!』


そうして、キャスケットは 自らの手で命を絶った――――・・・・はずだった








何の気紛れだか、喉を裂いたはずのキャスケットを救ったのはローだ

目を覚ましたキャスケットの傍についていたらしいトラファルガー・ローと名乗ったその吸血鬼は 何を考えているのか
キャスケットを完全に吸血鬼にしようという自分の思いつきを実行するのは止めたらしい
傷の治りの早い彼等に必要のなさそうな医療知識を持っていたらしいローは、治療するより完全体にする方がよほど
手間がかからないにも関わらず傷口を縫い、その上 キャスケットの失った血を補う為に"輸血"を行っていた

("輸血"・・・だって? 吸血鬼が、わざわざ輸血用製剤まで用意して?)

キャスケットの意思を汲んだと言っていた
命を賭してのキャスケットの望みを この男は聞き入れたというのか? ・・・吸血鬼が?

まともに話なんか通じなさそうなこの男の情に訴える事が出来たとは思えない
彼にとって何か面白いと思える事があったのだろう
それが何か分からないまま、キャスケットは男の "ここで一緒に暮らせ"という提案を受け入れるしかなかった


「だから言ってるだろう? "食事" をしろと」
共同生活を始めてからもローは自分の意見を変えない
事あるごとに食事の必要性を説き、人間である事に拘るキャスケットの信念を無駄だと嗤う
決して無理強いはしない彼のその助言はキャスケットの決意を試しているようにも思え、ローが言うたびに却って
意思が固まっていく
多分この先も聞き入れられはしないのに根気よく何度も繰り返される助言を いつか受け入れる事があるのだろうか

共同生活といっても人間同士と違い一緒に食事をするでもなく、主に昼間に活動するキャスケットと夜を好んで
動くローでは生活時間から習慣まで全く違う
きっと、同じ空を見ていたとしても そこから生じる感想はまるで違ったものになるだろう
感覚も違えば考え方も真逆という程違う自分達は いつまでも交わらない、ねじれの関係のように
衝突することもなければ共感を得る事もない

(なのに、何故、どうして 一緒にいるのだろう)

こうして同じ屋根の下で過ごしていても、キャスケットから見たローは理解の外なのだ。
突き放しているようで、時に面倒見が良く、かといって彼自身、決して優しいわけではない

吸血鬼とは敵対するばかりで、こんなに長く一緒に居るのはローが初めてだから確証はないのだが、
どうも、それらはみな吸血鬼の特性というよりはロー自身の性格のように感じられて もしかすると彼は
吸血鬼の中でも変わり種なのではと思い至る

"俺をお前の枠に嵌めて考えるな"
耳元で ローの声がして、びくりと身動ぎしてキャスケットは眉を顰めた
(・・・夢?)
考え事をしているうちに いつの間にかうとうとしていたらしい
夢の中だと自覚があるのに 目が覚めぬまま会話が続いていく

『拒む選択もあっただろう? 共同生活を受け入れたのは 恋しかったからだ』
『違う!あんたが そう言ったんじゃないか!』
そうしなければ血族に迎えると言った。力に劣るキャスケットに、他の選択は無かったはずだ
否定し、睨み付けても相手は一向に気にも留めず、いつもの薄笑いを浮かべた涼しげな顔を崩さない

『違うな。 おまえは ただ淋しかっただけだ』
家を出て、ハンター仲間とも親しい相手を作らず一歩引いての浅い付き合いでしかなく、
そうやって一人で暮らしてきたキャスケットに向かって 仲間が欲しかったんだろうと、嘘を吐くなと
自分にも隠していた事実を暴き出す
『俺になら、おまえの秘密を隠さなくて済む』
強がってはいても 他人との接触に飢えていたんだと突き付け、怯むキャスケットの耳に悪魔の囁きを
ねっとりと押し籠める
『仲間になれば 少なくとも "一人"じゃなくなるぜ』
『嫌だ!』
ガタンッ!
思い切り突き飛ばし、これ以上余計な口をきくなと相手の胸ぐらに掴み掛かっても、混血のキャスケットと
純血種のローとでは力の差は歴然で、
瞬く間に組み伏せられたキャスケットは無様な格好で床に転がっていた
『物覚えが悪いな。 言ったろ、不相応な力は使うなと』
『っう・・・ぅ、』
ギリギリと襟首を締め上げられ、呼吸が出来ずにキャスケットが呻く
間近に見えるローの顔は一見無表情に見える。だが、冴え冴えとしたその目の色には静かな怒りが
含まれていた
『また繰り返すなら こんなもんじゃ済まねぇぞ』
ギリッ・・・と、最後にもう一度きつく締めた後、ローは少しだけ手を緩める
『わ、かっ・・・た・・・』
苦しい息の下からようやく絞り出した声で応じた途端、唇で塞がれる
ただでさえ酸欠のところへの深い口付けは苦しいものでしかなく、逆らう気力すら奪われそうだ

『・・・・っ、・・・』
キスから解放されると同時に 薄れ始めたキャスケットの意識の向こうで
"夢の中ですら思い通りにならないな"
そう呟く声が 微かに聞こえたような、気が した










 平行でなく、交わりもしない

ねじれた位置関係が 二人の距離









お題ったー 【ロキャスへの3つの恋のお題:同じ空を見ていた/いつまでも交わらない、ねじれの関係のように/
夢の中ですら思い通りにならない】でした。
あっ 「恋のお題」だったの忘れてた!もしローとキャスの間に恋に近い感情がとすれば、キャスの中の吸血鬼の
部分がローに、人間の部分がペンギンに惹かれてるように思います。(ホントは逆の方がいいんですけどね。
"ペンギンの血" に惹かれてる部分もあるって事で。でもキャスが持つ吸血鬼への複雑な感情を考えると
どうしてもその設定に出来なくて) あと、多分このローはキャスの夢の中に入る事が出来ます。名前を交換した
からかな?それに加えて純血種だからかな?  この二人は一緒に暮らしてても衝突する関係でいるのがいいと
思います。(ちょ、途中に衝突すらしないって書いてるけどw)理解し合えないのに離れて暮らせないキャス。
この後ペンギンと出会うまでキャスケットを理解している唯一の相手がローです。キャスがローを見るよりも
ローの方がまだキャスを理解できてる


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