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SS置場6
吸血鬼パロ番外 (L)
以前リクエストで書いた吸血鬼パロのパロ(?)です。前回の話はペンキャスですが今回はロキャス区分かなーと
思うのでこちらへ (あ、ローとキャスは出来上がっていませんよ〜。一応ペンキャスだし)












見上げた先には 余裕の表情で自分を眺める男の顔があった
仕留められると思った相手は予想以上の能力で、返り討ちにあったキャスケットは術もなく床に転がっている

「どうした、ハンター。
おまえらの仕事は俺達吸血鬼を狩る事なんだろ?」
銀の弾がなけりゃ何も出来ないってのか?

勝利を確信している男は 唇を歪めて嘲笑う

持っていた銃は床の上、とても手の届かない位置に転がっている
まだ、自由に動く事が出来れば勝算もあるかもしれないが、薙ぎ倒されたキャスケットの首は、
仕留めるはずの獲物の手に押さえつけられていて
自分とさほど変わらぬ体つきの相手なのに 男の背後から沸き上がる身動きすら封じる程の威圧感に
縫い留められ 指先すら満足に動かせそうになかった

返り討ちにあったハンターの行く末など知れている
あまり仲間意識の無い彼等だから "仲間の敵"と嬲り殺しに遭う事はないかもしれないが、代わりに
同族ですらそうである彼等には人間の命など塵にも等しい。ハンターの苦痛による耐性を見るだとか、
どこまでやれば死ぬかといった、玩具の代わりに散々拷問に遭う事も多い
腹が空いていれば餌にされる場合もあるが、キャスケットの知る限り 発見されたハンターの遺体は
正視に耐えないようなものばかりだった





青褪めた顔で自分を見上げる若い男を ローはわざと嫌らしい笑みを口元に敷いて眺めた
ハンターとして独り立ちするには目の前の男は若すぎる
獲物に定めた吸血鬼の力量も読めないような若造は この年頃であれば熟練したハンターと組むか 同じような年代の
仲間達とグループで行動するのが普通だ
だが、目の前の男を援護する人間の気配は辺りには無く、このハンターは無謀にも一人でローに挑んできた事になる


ふふ、と笑って 未熟なハンターに向けて口を開く

「徒党を組むのは嫌いか? 気が合うじゃねぇか。 なんなら、仲間にしてやろうか」
狩る側から狩られる側への転身はさぞかし楽しいだろうぜという 戯れの思いつき。
ハンターが狩る側とはいえ、ロー達吸血鬼から見れば彼等人間は餌でしかない
少しばかりの皮肉を込めて 軽い気持ちで口にしたその遊びは予想外の抵抗に遭った

「嫌だ、止めろ!」
目を瞠ったハンターは、思いも掛けない力でローの腕から逃げ出そうと蜿いた
細身の、どちらかといえば華奢な体格の彼のどこにそんな力が潜んでいたのか、油断していればローですら
うっかり跳ね飛ばされかねない程の力が自分を押しのけようとしている
なるほど、彼が一人で仕事をこなしてこれたのはそれなりの力があった為かと納得する
――だが、あくまでも油断していたら、だ。
思った以上の力を発揮する相手に だんだんと興に乗ってくるのを感じる

「残念だな。 これだけ嫌がられちゃ、ますますそうしてやりたくなった」
人間曰く、呪われた血の流れる化け物の仲間になればいい

その一言で男の力が更に強くなる
だが 吸血鬼の中でも優れているローが本気で力を籠めれば 比較になるものではなかった

諦めな、と意地悪に笑って男の首筋に唇を寄せる
嫌がる人間を無理矢理仲間に加えるのも一興だろうと 男の首に牙を立てようとしたところで動きを止めた


「おまえ・・・?」
問い掛けるローの声で 男が ハッとしたように顔を背ける

確証はなかったが、彼のその仕草で直感した

「仲間――か?」
「違うっ!」
間髪置かずの否定の声は肯定にしか聞こえなかった
なにより、ハンターであるはずの男から 本当に微かなものであるが同族の匂いがする
血を啜ろうと、生気が最も濃く流れる首筋に顔を寄せるまで、匂いに敏感なはずの吸血鬼ですら
気付かなかった程の、微かなもの。

「ハーフだな。それも、一度も血を味わった事のない」

床に転がるハンターのその体臭はローの見立てをうべなっていて それはもうヒトと変わりないと
呼んでいいものだった

「ハーフとは言っても、吸血衝動はあるだろう? 抑えつけてきたのか。意思の力だけで?」

それはローには理解出来ない努力だった
そんなことをして何になる
お前の中に俺達と同じ血が流れている事実は消せないのに。
人間なんて そこらに溢れるくらい居るじゃねぇか。少しくらい俺達の餌にしたって滅びたりはしない

話す間も 男は腕から抜け出そうと必死だった
血相変えてのその抵抗は 自分の中の何かを苛つかせる
男の、激しい拒否は却ってローの意地に火を付けた

「そんな中途半端な身じゃ どちらに属していても肩身が狭いだろ」
俺が、完全体にしてやるよ

そう囁いて彼の首筋に唇をつける

その刹那の、ハンターの出した力は 相当のものだった
油断したはずもない、絶対に超える事が出来ないはずのローの力を上回り、馬乗りになっていたローの体を
跳ね飛ばす

まさかという思いで起き上がった時には、血族に加えようとしたローの目の前で ハンターが自らの喉に
銀のナイフを突き立てたところだった
自分の力が吸血鬼を凌駕出来たのは一瞬だけで 次に押さえ込まれたら一溜まりもないと気付いていたのだろう

『 吸血鬼になるくらいなら、自ら命を絶つ 』

その強い意思をひしひしと感じながら、転がった先に落ちていた彼の銃を ナイフ目掛けて投げつける
咄嗟とはいえ、ナイフが弾け飛んだのは致命傷を負うギリギリ一歩手前だった
傷口から噴き出す血に赤く染まった男がそのまま床に倒れ伏す
抱えた男の傷口を押さえながら ローは眉を顰めて意識の無いハンターの顔を眺めた








意識を取り戻した時にはキャスケットは知らないベッドの上に寝かされていた

思い切り、喉を引き裂くつもりでナイフを引いたのに、どうして自分は目が覚めたのだろう

まさか・・・という思いにひやりとしたものが背を伝う
元々青褪めていた顔から更に血の気が引いていくキャスケットの顔は強張っていて、絶望に閉じかけた視界の端に
自分の腕から伸びる赤い管が写った
(何・・・コレ。 点滴・・・、違う。 輸血・・・?)
傷のせいで動かない首を 無理に動かそうとした途端、鋭い痛みが走って硬直する
呻きながら、どうして輸血がと訝しむキャスケットの視界に 男の顔が割り込んだ



「安心しろ、怪我の手当てをしただけだ。おまえはまだ人間のままだ」
怪我人が一番気になっていた答えを真っ先に口にして言葉を続ける
「喉を裂いてまで嫌だというおまえの意志は尊重するが、そのうち絶対に無理がくるぞ?」
少なくともハンターという仕事は止めるべきだとローは男に告げた

一人で狩りをしているようなら、さっきみたいな場面になる事もあるだろう。
人間と同じ物を食っているだけのおまえが、あんな無茶な腕力を使える方がおかしいんだ
それだけの力を出せる食物を与えていない身体に無理を強い続けていればそのうち日常生活まで
過ごせなくなるぜと語る

「悪い事は言わない。おまえの体の為だ。"食事"をしろ」
このままの生活を続けていればヒトとしての寿命すら全う出来ないだろうと容易に想像がつき、ローにしては珍しく
何の損得勘定もなく男を説得していた
だが、死を選んでまで仲間入りを拒んだ人間が、己の寿命を惜しむだろうか

「此処・・・どこ?」

ぽつりと尋ねた質問は病院で自分の体質を知られるのを危惧してのものだろう

俺の住処だと教えてやると、安堵したように瞼を下ろした男は
忠告は有難いけど・・・と、細い声で言葉を濁す

やはり、ローの言うような食事をするつもりはないのだろう
彼が半分同族である自分達を狩る職業を選んだ事からも 人間でありたいという強い意志の現れだった

ハーフでありながら劣った種族である人間でいたいと言い切る この若者が酷く気にかかった
ハンターという体を使う仕事に就いているにも関わらず とてもそうは見えない細い体は 遠からず人間の食べ物だけでは
その成形を維持出来なくなる

「完全体にならなくてもいい。ハーフのままでも食事だけは摂れ」
重ねて言っても 男は目を伏せるだけで応えない

相手はハンターだ。気にしてやる義務も義理もない
なのに、自分とは考え方も何もかもが違い、理解出来ないこの男の事が酷く気になった

「なら、妥協点だ。傷が治って動けるようになったら此処に越してこい」
「え、」
目の届くところに置いて男の様子を見る為の提案は 彼にとっても意外だったらしい
勿論、面倒見が良いわけでもない自分の出した答えに一番驚いているのはロー自身なのだが、
初めから一貫して態度を崩さなかった男が見せた戸惑いの表情は その選択で正しいとローに確信を与える
「そうすれば、仲間に加えるのは 止めてやる」

ローの真意を推し量りかねているらしい男も この交換条件には頷かざるを得ないだろう

「馴れ合う必要はない。只の共同生活だと思え。おまえ、名前は何だ? ハンター」
「・・・・・キャスケット」

躊躇いながらも素直に答えた相手の髪をくしゃりと撫でたローは 名を交換するという事がどんな意味を
持つのか知らないかもしれない、半分のみの同族に
「トラファルガー・ロー。 名前でいい。ローと呼べ」
自らの名前を与え、額に落とした口付けで更に強固に関係を結ぶと 怪我人に眠れとだけ告げて部屋を後にした






 招かれざる血族

懐に入れたら こいつはどんな顔をするだろうか












名前を交換する事で何らかの繋がりが生じるんだと思います。眷属とまではいかなくても、身内になるとか
そんな程度かなーって思いますが。あと、額への口付けもなんか儀式的な意味がありそう。ローがすると
特にそんな風に思えますよね。サイトKのHさんのお誕生日に贈ったSSでした^^



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