SS置場6 転校生15 L 転校生 オチてはないんですがここで一区切り。結構前に書いたのにUPする機会が無くて間が開いてしまいました 「それで、お宅に伺うのは初めてなの?」 駅で父と待ち合わせてローの家に向かう道すがら 母が尋ねる 互いに新しい伴侶を得た事で母の方の気持ちも安定したのか、心配したような不穏な空気もなく父と母は再会した これから キャスケットの身の振りをどうするかをローの親を交えて話し合うことになっている 母の方は父と違ってローとは面識がある。 なので、色々と聞きたがるのも当然だった 「だって、そんな話にならなかったし・・・うちに来るのが殆どで。」 家事があるからと放課後は自宅に戻る事が多いキャスケットについてローがやってくるのはよくある事だったが その逆は無い そもそも、仲間内の家にお邪魔したのは ボニーの家に集まったクリスマスの時くらいのものだった 「遊びに出た時なんかはそのままみんなと外で会うし、その帰りに家に寄る事なんてそうないし」 その、友人達から聞いている"ローの親は変わり者"だという事を話すべきか躊躇っているうちに 目的の家が見えてくる 「あれ・・・みたい」 「ここか?」 それまで話題に入れなかったらしい父親が声を出す 「ん・・・ここ、らしいんだけど」 「一軒家? 割と広そうな感じね」 想像していたよりも大きな家に少しばかり気後れする それでも、これだけ広ければキャスケットの1人くらい居候しても邪魔にはならないかもしれない 両親がそう考えてくれれば話はスムーズに決まるんだけど。 こればっかりは分かんないなぁと小さく息を吐いて、キャスケットはその家の呼び鈴を押した 「いやぁ〜、よく来た。 いらっしゃい」 ローよりも先に立って玄関で迎えてくれたのは変わり者と噂の彼の父親だった 初めまして、と挨拶を述べる両親も若干戸惑ったような様子で、隣に居たキャスケットも彼等の気持ちは良く分かった (うーん・・・、これは、わざわざうちの親が来るからって着替えたのだろうか) 一応 キャスケットの親達もスーツを着ていて、それなりに畏まった場に相応しい格好をしていた 出迎えたローの父親もスーツっぽいジャケットを着ている 着ている、のだが、その色が話し合いの場には場違い過ぎた ドピンクのジャケットの下に穿いているスラックスは・・・オレンジ色? 多分今、自分達家族は揃って "派手だ" "派手だわ" という思いが顔に出ているに違いない (まぁ、自宅だから・・・かな) キャスケットが無理矢理自分を納得させていると、どうやら両親も同じような結論に至ったらしい 気を取り直したように戸惑いを払拭した父と母は にこやかに会釈して勧められるまま室内に上がった リビングではローが待っていて、既に何度も顔を合わせている母親と挨拶の言葉を交わす 彼の父親に会った事で予てからの不安に落ち着かないキャスケットと目が合うと、ローは苦笑のようなものを浮かべた それぞれが譲り合いながら漸く席に着く 本当であれば本題に入る前に世間話などで場を和ませるのが日本的なのだが、ローの父親は前置き無く直球で来た 「それで。この子を、うちで預かればいいんだな?」 誰にともなく確認するように言われた発言に、キャスケットの父親が ゲホ、と噎せる 噴き出し掛けたお茶を根性で飲み込んだ父の背を慌ててさする母親にも目をくれず、ドフラミンゴと名乗ったローの 父親は機嫌良さそうに続けていた 「見ての通り、うちには余ってる部屋はある。一人と言わず二人でも三人でも居て貰って良い。」 彼は何を言いたいのだろう、もしかすると広い家だから気にするなと言いたいのかもしれないが、それにしては ピントがずれてる 続けられた言葉は、ドフラミンゴの言葉の意味を汲み取ろうと耳を傾ける両親の予想を裏切る内容だった 「聞くところによると、お宅の息子さんは家事が得意だそうで、留守がちなコレの母親だけじゃ手の届かない部分は 息子さんに任せられそうだ。うちとしても助かるし、あんたたちも子供を気にせず新しい家庭を持てる」 「は?」 聞き返す父が背後に醸し出す空気が重い 隣の母も、先程浮かべたままだった笑顔が引き攣っていた あの、と口を挟んだ母は、それでもまだ遠慮という体裁を纏って言葉を選んだ 「どうお聞き及びなのかは知りませんけど、再婚に子供が邪魔になったわけじゃないんです」 おやそうかい、と眉を上げたドフラミンゴは彼の理解しているらしい話を口にした 「俺はまた、どちらの家にも連れていけないから 残された子供を住み込みの家政夫に出すって聞いてたんだが」 「言ってねぇ」 その隣で ローがぼそりとツッコミを入れた あんたあいかわらず人の話全然聞いてねぇなとぶつぶつ漏らした後、彼はキャスケットの両親に向かって すいません、馬鹿な早とちり野郎ですが悪気はないんですと謝り頭を下げる こんなしっかりしてる子の親なのに・・・という目で見た母親に如才なく反面教師なんですよと返したローは 隣の父親の頭をガンッと握り拳で殴った 「駄目だ、家政婦がわりにこき使おうとしている家には大事な息子は置いておけない!」 「そうよ、それくらいなら今の部屋を引き払わずに一人暮らしさせるわ!」 「ちょっとちょっと、落ち着いてよ」 両親が一致団結してローの家には預けられないという結論に至りそうで、キャスケットは慌てて声を上げた。 そりゃぁ 今の家にそのまま自分だけ残れるというのなら別に自分は構わないのだけど、頭の冷えた二人が本当に そうしてくれるかというとそれもまた怪しい 「まさか本当に家政婦がわりにするつもりなんかないですよ。俺がそんな事はさせません。だいたい、親がこんなで 留守がちだから一人で過ごす事も多いんです。俺も、キャスケットがうちに居てくれる方が心強い」 勿論彼の保護責任者はうちの父ではなく、お父さんになるでしょう。だけど、失礼ながらおうちの事情は聞かせて もらっています。通うには少し遠い彼の父親の家で傷心の奥さんに気を使って暮らすよりは、学校に近いこの家に 下宿させているという心づもりでいてくれればいい。キャスケットだけで一人暮らしさせるよりは少しは安心だと思います。 親の目が届かないからといって羽目を外すような事にはならないよう、俺も気を配ります。」 父親のドフラミンゴの失態を補うためか、いつもより強めの猫を被ったローの説得の言葉は、彼の父親よりもよほど キャスケットの両親の心を動かし、同時に血が上っていた頭を少し冷ましてくれる 冷静さを取り戻した両親と、ローが睨みを利かしている彼の父親を交えての話し合いは、家を辞退する頃には 驚く事にキャスケットをこの家に預ける方向に落ち着いていた (驚いた。まさか、本当にOKが出るなんて、思ってなかった) 本当に両親が説得できるのか 半々の気持ちで無理かもと思っていたキャスケットは、すんなりと・・・とは言えないが 希望が叶った事にまだ呆然としていた (あ・・・。これは、もしかして、ドフラミンゴさんのお陰なのか、な?) あまりにも無茶苦茶な彼の言動に両親とも、毒気を抜かれてしまったような気がする その後のローの説得も見事だったし、もしかしたらそれを見越して家に呼んだのか? ローって。 でも、彼の父親も軽薄な部分はあれど悪い人ではなかった 帰り際に キャスケットの頭を撫でたドフラミンゴは "離婚しても親は親だ。大事にされてんな、一人息子" と 言った後、お前が居る限り親の縁は切れないんだぜと耳打ちした 彼の無茶な物言いに反発する両親はすっかり元の夫婦だった頃の気安い雰囲気で話せるようになっていて、 今日の話し合いの場は色んな意味で自分にとって良い方向に向かったのだ (この街に引っ越してきた時は、とても自分達家族がこんな風にまた会う事が出来るなんて、思ってもなかったのに) 父の浮気は キャスケットにとって 正当化出来てはいない。 だけど、いつの間にか 以前のように顔も見たくないというような、大きな傷ではなくなっていた 片意地はっても仕方ない 自分達はどう足掻いても親子なんだし、やっぱり、大切な家族なんだ 今回こういう形で父親を頼る事になって、また彼に対する見方も変わったように思う これが此処に越してきた頃の自分なら 素直に頼る事は出来なかっただろう (時が傷を癒したのか、自分が成長したのかは分かんないけど・・・) 好きな人が出来て、気持ちの変化はどうしようもないと 身を以て知ったからだろうか。 まだ、自分には分からないけれど、 色々と自分を変えてくれたこの街を 離れずに済んでよかった それぞれの環境の変化で 戻る場所を別々に持つ事になった3人の並んで歩く姿は、仲の良い家族そのものにしか 見えなかった 新しい環境とそれぞれの選んだ第一歩 これも萌えどころなくてすみません!一応の決着だけはつけておこうかなという事でこんな展開になりました。 父親の家をメインの居としておいてローの家に頻繁にお邪魔→泊まりこむっていうのも考えていたのですが 妹が亡くなってしまったから、それもどうなんだろうと… 最初から家族の和解で一段落のつもりだったのですが、 これがオチですっていう感じじゃないんですよね。お稚児さんシリーズだとちゃんとした結末になってたし、 ああいうのとは違う。 こういう形にしておけばセカンドシーズンみたいな感じで恋仲の二人がどうなるのかってのを 書きたくなったら書けるし番外で季節物を書くのも出来るかなってのもあってひとまずの区切りにしました。 ところで 名前なのですが、トラファルガー・ドフラミンゴになるのでしょうか? [*前へ][次へ#] [戻る] |