[携帯モード] [URL送信]

『糸の切れたマリオネット』


そう、この目だ。
純粋な興味。俺が何かを話したり教えたりする度に、イオは子供のように純真な瞳で俺の話を聞いていた。
膨大なデータがあるにせよ、百聞は一見にしかず、実際に五感で感じたものに勝るはずもない。
俺は、イオにこの世界のことを知って欲しいと思う。
無へ色を与えていくように、輪郭だけだったものに肉付けして作り出す、生きることへの喜び。
イオの人生を楽しんでもらいたい。

「じゃあ、さっそく明日、出掛けようか。予報では天気もいいみたいだし」

「どこに行くの?」

「ひみつー」








その日の家事はイオが尋常じゃないスピードで片付けた。しまいにはア然としている俺に早く寝なさいと諭す始末。
鼻歌でも歌いだしそうに目覚まし時計(俺用)をセットするイオを見て、こっちまで嬉しくなった。

明日はいい日になるといい。
眠りにつきそうな頭で、ぼんやりと考える。

















今思えば、それまでの穏やかな生活が、俺達の思考回路を…鈍らせていたのかもしれない。




[*前へ][次へ#]

2/18ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!