肌寒い日には、
自覚したら、いてもたってもいられなくなって
走り出していた。
辺見に礼を言ったら、あいつは柄にもなくにっこり笑って、
『お前は笑ってた方が良いよ』
って言うもんだから、ばーかと悪態をつきながら
俺は彼に笑いかけた。
肌寒い日には、
走る間、考えてた。
今更自分の気持ちに気付いた俺が、あいつの元に走っていってなんと伝える?
気付いたらお前が好きだった?
バカらしいと、笑われるだろう。俺がその立場だったら確実に嘲笑う。
長い廊下には俺の荒い息遣いと
床を蹴りあげる音のみ。
「……………どう、すれば…」
どうすれば良いんだよ…?
じわじわと俺の視界を侵食する水滴は、ポタポタと薄汚れた廊下に落ちて行く。
だって、だって
あいつは俺に言ったんだ
『お前がそれで安心出来るなら、俺は』
あの時のあいつの悲しそうな顔は
『俺は偽りの彼氏でも構わない…だから』
酷く鉛のように俺を押し潰して
『だからお前は』
あいつの想いを踏みにじった俺を
『笑っていてくれ…佐久間』
(問題?)
(最初から最後まで、全部だ)
[*←]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!