ほほ笑みあって、
誰でも良い
誰でも良いから、大丈夫だって声をかけて、優しく微笑む奴が近くにいてくれたら…
本当に、本当にその時は、そう思って言った言葉だった。
気まぐれな自分の思考は、自分でもわからなくなるほど気まぐれで
今はもう
離したくない、離れてほしくない存在になってゆくんだ
ほほ笑みあって、
「源田と付き合ってるって本当かよ!?」
「……はぁ?」
血相を変えて、教室移動の準備をするために教室にいた俺のもとに、息を乱して駆け込んできた辺見に驚いて、俺はすっとんきょうな声を上げた。
「すれ違った女共が話してるの聞いて…!お前、正気か?」
「……………、」
辺見は、俺が鬼道さんを慕っていたのを知っているだろうからこんなことを言ってるんだろう。
あんなに好きだったのに、
そう言いたいんだろう。
「……正気だよ」
「ッ違うだろ!!お前は自分の気持ちに嘘をつくような奴なんかじゃない筈だろ!?」
「……………ッ辺見、」
「…………?」
聞きたいのはこっちだ。
自分でも自分がわからない。
鬼道さんは好きだ。多分これからも、鬼道さんのことは忘れられない。
「…………じゃあ、源田は?」
誰もいなくなった教室に、辺見の声が響く。
「………わからない……鬼道さんの時とは全然違う。この感情を上手く言葉に出来ない…でもっあいつがいないと俺は、俺じゃなくなりそうで…ッ」
辺見の眉間にしわが寄る。ふるふると拳を震わせる俺は今、帝国学園の気高い参謀の1人ではなく、ただの自分に怯える1人の女にしか過ぎなくて、
「……じゃあ、それを俺が言葉にしてやる」
「……え?」
自分でもわからなかった答え。
鬼道さんを慕っているのに、頭から離れないのに、あいつ…源田がいないと生きていけない…そう思うくらいに、あいつを手離したくない。
ただそれだけ。
それだけ故に迷う問い。
あいつがそれを言うまでは、俺は思い付きもしなかった……その二文字の言葉を
「それはな、『恋』って言うんだぞ」
「…………へ?」
(自覚意識が芽生えたとたん)
(瞳から流れ落ちたものは)
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