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恋愛小説
『Prism』


『Prism』


叶わない、思いがある。
伝えたい、思いがある。

人はそれぞれ…



思いを持って生きている。

*****

「俺と…結婚してくれ。」
そう言った和雄(カズオ)に七緒(ナナオ)は頭を下げた。

「…ごめんなさい。」
七緒は和雄に背を向け、駆け出した。


今年で38歳の和雄と七緒は15歳の歳の差だった。

二人が初めて出会ったのは風俗店であった。
「お客さん、どーぞ」

コップに酒を注いだ七緒に和雄は"ありがとう"と言った。


嬉しそうに笑った七緒に和雄は一瞬で恋に落ちた。

到底叶わないと思っていた。

でも、違った。
「私で良いんですか…?」

告白した和雄に、嬉し気にそう言ったのだった。

それ以来、七緒は風俗店を辞めて近所の喫茶店で働き始めた。


付き合い初めて3年、和雄は七緒にプロポーズをしたのだった。


*****


「やっぱり15も上のオッサンなんか嫌だよな…」

アパートに帰った和雄は呟いた。

ふと七緒の保険証が出しっぱなしになっているのが目についた。
「仕舞えって言ってるのに」

和雄はそれを手に取り、何気なく見た。


『―…20歳』

「え?」
和雄はそれを見て驚いた。
七緒の年齢が20歳となっていたのだった。


和雄は顔をあげると、外へ飛び出した。

*****


和雄は街中を駆け回った。

そして、最後に行き着いたのは公園だった。
「七緒!」

ベンチに座っていた七緒はビクッと顔を上げた。
「…ごめんなさい。」


泣きそうな顔でそう言った七緒は話始めた。

16で親を振り切り上京した七緒は、年齢を隠して風俗店に勤めていたという。

そして、18の時に和雄に出会った。


「最初は…お金とか貰えるかなって思ってたの。

だけど…

和雄さん、凄く優しくて。
私を見てくれて…。


私が何か出来ない事があっても笑って励ましてくれて…



好きになっちゃって…でも、私は騙してた!!

最低なのっ!」



そう言った七緒を和雄は抱きしめた。
「知ってるよ。

七緒が本当にいい子なのも…優しい子なのも、全部。」

泣き出した七緒の頭を撫でながら和雄は続けた。


「俺と、結婚してください。」


七緒は泣き声を上げて和雄に抱き着いた。










桜が舞う頃、指輪を取り交わす新郎新婦が笑っていた。









END


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