普通の小説
『青空』
『青空』
僕のご主人は優しかった。
「アオ、ただいま!」
笑ってお家に帰って来て、僕を抱きしめてくれた。
僕は、ご主人の腕が大好きだった。
でも、ある日ご主人は変わっちゃったんだ。
「こっちに来るな!」
そう言って僕をお家から追い出したご主人の顔は、泣きそうだった。
それでも、大好きだった。
だって本当は優しくて、暖かい人なんだ。
僕は知ってるよ。
冬になって、寒さに耐えられ無くて体が動かなくなった。
寂しくて、寂しくて…
ご主人に会いたかった。
*****
それは、俺がコンビニに行った帰りだった。
「なんだ…?」
微かな声がして下を見ると小さな猫がいた。
「やめろよ、俺は飼えないよ」昔、酷い目に遭わせてしまった飼い猫のアオを思い出した。
当時、親友の借金を肩代わりさせられた俺は、飼っていたアオを追い出してしまった。
借金はどうにか返済出来た。
だが、アオはどんなに捜しても見つからなかった。
嬉しそうに猫は頭を俺に擦り付けてきた。
「…アオみたいだな」
そう呟いた俺に、猫は嬉し気に一声鳴いた。
俺は猫を抱き上げた。
暖かくて、可愛くて、とても愛おしいと思った。
過去を拭う事は出来ないけれど、改めて始める事は出来る。
猫は一声鳴いた。
そして、俺は猫を抱き直して家に向かって歩き始めた。
END
お題小説です。
"猫"、"過去と未来"、"転生"
でした。
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