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はっきりいって、自分が何故まだ体を動かせれるのか不思議だった。
徐々に感覚が鈍りつつある。
それなのに、悴んだ指には器用に動かすことが難しくなっていた。
感じる空腹。
今食べたとしてもどうせはいてしまうんだろう。
それでもお腹に足しになるものぐらいは摂取したほうがいいのかな、とチアキはぼんやり考えていた。
港に向かって今まで歩いていたのだが、かなりの距離があるのでその手前の小さな錆びついた村で休憩をとることにしたアオイたち。
今、彼等は宿の予約をしている。
なので自分は、それを静かに待ち、手渡されたパンのヒト欠片を食べるか食べないか悩んでいた。
最近、食べる気力も失せていた。
また吐いてしまう気がした。
それでも、アオイの指示をこなすには必要な摂取だとは理解している。
「………」
ふと、視線を感じて、顔をあげてみると、チアキの目の前には小さな子供がパンのかけらを見つめているのだとすぐにわかった。
自分と同じ、少しやせてしまった体つき。
「食べる?」
少年ははっとなって首を横に振るった。
そんなにお腹を空かせているのだから、食べればいいのに。
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