19
彼は低い声で口を開く。
「お前、―――黙っていたな?」
「・・・・・・」
チアキはすぐさま視線をそらした。
だが一瞬見えたアオイの目には怒りが宿っているのがわかった。
「けがを何故我慢していた?」
チアキの腕には赤くはれた幾重にもある筋跡がくっきりと浮かび上がっていた。
また、変色した痣や、完治しきれていない傷跡も見受けられる。
今回の事だけで付けられたものではない。
明らかにあの商人にも暴力をふるわれていた傷だった。
腕だけではないだろう。
おそらく体中…
「なぜ、お前は黙っていたんだ?」
「それ、は……」
チアキはわなわなと肩を震わした。
「俺のこと、まだお前の敵だとでもおもってるのか?」
「そんなこと、ない…!」
「なら、信用してねえのか?俺をまだお前は信用していねぇのか?今俺が気がつかなかったら、どうせまたひとりで我慢するつもりだったんだろ?
あのときだってそうだ。お前は、あの男に連れられた時、顔をゆがめていたよな?痛みにこらえようと必死になっていたよな?」
「…でも痛いなら、痛いっていわねえと俺だってその痛みがわかんねぇだろうがっ!」
びくっ
慌てて腕を引っ込めるとチアキは後退した。アオイはそれでも逃がさぬよう距離を詰める。
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