20
「ご…ごめんな、さ…」
「あの一味につけられたんだろ」
「……」
「そうだな?」
ずっと視線を合わさず黙りこくるチアキだが、その沈黙こそ肯定の意味になっていた。
そして、彼女の首筋に視線を移すと、くっきりと赤い跡が残っている。
間違いない。
さっきぶっとばした男がこいつを…。
アオイはいらだつように舌打ちすると、拘束していたその手を離した。
「今日はさっさとねろ。いいな」
「アオイさ……」
「いいな、チアキ?」
有無を言わさず、チアキに命令をする。
彼女は肩を震わせながら、小さく、そしてゆっくりと頷いた。
「………鍵はしめておく」
パタンと扉を出てアオイは行ってしまった。
「……」
アオイがいなくなってチアキは着替え始めるが、
衣服が傷に触れて感じる痛みよりも、今にもあふれ出そうな涙をこらえる方が辛かった。
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