15
男が動かない―――否、動けない様子を見ると、アオイは力業に出た。
「さっさと消え失せろ」
目の色がより赤みを増して男を睨んだ。
すると突如、騒いでいた風が男に牙を向き、強烈な風力で押し飛ばすと、そのまま窓を突き破って、この場から強制退場させた。
そして厳しくしつけられた犬のように、風は用が無くなるとぴたりとなり静まった。
しーん。
嘘のように静寂になったこの状況。
男が余りにもあっけないやられ方だったので、ポカーンとチアキは唖然になっていた。
ふと、窓があったはずの所へ目を向けてみると、大砲かなにかで撃ち抜かれた様に綺麗に外の景色が一望できた。
「……」
「……」
今度はアオイに視線をかたむける。
彼は目をつむっていた。
そして、次に目を開くときには今まで通りの青い宝石のような瞳に戻っていた。
「遅れて、悪い…」
顔をあげ、アオイはチアキに近づくと、そっと抱きしめた。
「怖かったろ?」
「………っ」
暖かい温度を感じて、ようやく金縛りのようにあっていた体が解放された。
「アオイ、さん…っ……!」
チアキは二度もおきた奇跡に感謝した。
また助けに来てくれたのだ。
アオイさん。
アオイさんが、また来てくれた。
状況を切り抜けられた事よりも、アオイが来てくれたことがチアキには何よりもうれしかった。
きっと、英雄と呼ばれる人が救いに現れたってこれ程の安堵を感じることは出来ないだろう。
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