13 あれは確か、 男がゲームを始めようと自分を夜、暗い森に放ったときだった。 商人の仲間の中に混ざっていたこの男が自分を一番に見つけると、今のように押し倒し、幼い自分で欲情を満たそうとしたのだった。 仲間が駆け寄ってくる音が聞こえたので、行為が最後までいくことはなかったが。 鮮明に覚えている。 恐怖、絶望、悪夢。 声にならなかった叫び。 その全てを、 この身体は覚えている。 「あの時は小汚くて、醜くかったからそんなに欲しいとは思わなかった。ただどうしようもない衝動を晴らそうとしただけだったんだ。…だが、何故だろうね?今は君を迎えにいかなかったことにすごく後悔をしているよ」 男が嬉しそうに白い首筋に顔をうずめる。 びくりとチアキの体が震えた。 「でも、こうして会えたことは運命かもしれないねえ?そうさ、君は私の所に来る運命だったのだ…」 手の自由が聞かない。 体は恐怖に支配され、思うように動いてくれない。 この声は叫びたくても音に変えることは出来なかった。 ――まるであの時と同じ。 暗闇の世界に 自分はまた、いるんだ。 [*前][次#] [戻る] |