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ある人物を探し出すために、一人で旅に出ているという彼の本名はアオイ・クロフォード。

歳はまだ若く、19を迎えたばかりだという。


チアキはその事実に驚いていた。


というのは彼は内面的にも大人びていて、その表情はいつもどこか遠いものを見据えているようだったので、もっと大人の人なのかと勘違いしていたからだ。



そしてここは東方に位置する小さなサングルの街。

近くに森があり、そこから収穫できる産地限定の木の実などを売って栄えてきたらしく、規模が小さい割に人が賑わっていた。


現在その片隅にそびえる宿に居させてもらっているわけだが、アオイの口から何を聞いても、その世界の話を理解することはできなかった。

チアキ自身もどこから話せばよかったのか分からなかったし、自分の言葉を信じてくれる自信がなかったので、異世界から来たという言葉をアオイにすら打ち明けなかったのだが。


アオイはそんなチアキを、身寄りのない、貧しい街からさらわれたどこかの娘なのだろうととっていた。

都合のいいことに、チアキが幼少時からさらわれたと解釈しているらしく、この異世界特有の話をされても世間知らずという形で乗り越えることができた。




「種族は?」

「種族?」

「…お前、種族も知らないのか…」


アオイはどこまでならばチアキに話が伝わるのかわからないため、話す内容にも難航していた。

「まぁ、説明しなくたって嫌でもこれからわかるだろ」

「…」

「そうそう、俺はいつまでもここに滞在しているわけにいかないから、ここで必要なものを買い終えたらこの町を出る。
もちろん、お前のこともあるからその先にあるフォーテルシュに寄らなくてはならないが、きっとそこでならお前のことも少しは分かるだろ。
ただし、俺の場合は近道であるレビエトの森を突っきって街についたら、すぐに海岸沿いに歩いてグローク港から船を捕まえなきゃいけねえな。厄介な事に、あそこの船は一度乗り過ごすと2日3日そこらじゃ来ねぇ。いや、でも確かあそこの一帯は鎮魂祭の時期も近づいているからその準備で通常よりも出港する船の数は増えているはずだ。頼めば居心地は保証してくれそうにはないが、適当にスペースはとってくれるだろ……」




アオイははっとなった。


今話していた内容を、チアキは全く理解する事が出来てないようで、ぽかーんとあっけになっている。


また独りでにつらつら話を進めてしまったと自分にあきれた。


「とりあえず、…町に出るぞチアキ」




アオイはチアキの手をつかみ、宿を出た。




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