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「なぁ、大切なものってなんだろうな…?」


【そんなの簡単だ!
自分を捨ててでも守りたいものに決まってる!命を賭けてでも護らなきゃいけないもんに決まってる!】


「…だったらさ、大切なものがひとつなんて言えるのかな?」



アオイはため息をつきながら穏やかに笑った。


「大切なものがひとつは限らなねんだよ。なぁ、そうだろ?」



契約の力でひとつは救えても、他の大切な存在を傷つけてしまう。



「だから、契約を破ったんだ。対価を渡さなかったんだ。俺は欲張りだからな」


【でも……契約は力をくれた。大切なものを唯一守り抜ける力を無くしたらお前は…!】


「『俺達』には他の方法だってあるだろ?曲がりなりにも゛ラキサの民゛だ。
俺は自分の能力が無いことで自分を見限ったけどよ…。ちゃんと向き合おうぜ、腹くくってさ。」


保証はどこにもない。

あっさり野垂れ死にしてしまうかもしれない。
いや、きっとそうだ。



なのに、


――――――なんで?



なんでお前は朗らかに笑って見せるんだ?





【何故だ……お前は何故『俺』と違っていくんだ?『俺』は『お前』だろ?

……なぁ、どこが違うんだ?

何で『俺達』はこんなに違うんだ?】


闇が本来の姿に戻った。
等身大の俺。

ただ違うのは瞳の色が鮮血の紅に染まっていることだ。


【何が、何が…違うっていうんだよ……っ】


昔の自分がなんだかちっぽけに見える。

考えればわかることなのに。


どんな強い力を持とうとも、意志を固めようとも、それは全部まやかしのつよさにすぎない。



「なんだよ、わかんないのか?」

【……っ】







「お前だって惚れたくせに」




どこかで闇が砕ける音がした。
それは俺の心か、『俺だった』心が割れたのか、わからなかったけれど。

光がようやく見えた気がした。


ここからがきっと『俺たち』のスタートラインなのだろう。





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あきゅろす。
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