2 「なぁ、大切なものってなんだろうな…?」 【そんなの簡単だ! 自分を捨ててでも守りたいものに決まってる!命を賭けてでも護らなきゃいけないもんに決まってる!】 「…だったらさ、大切なものがひとつなんて言えるのかな?」 アオイはため息をつきながら穏やかに笑った。 「大切なものがひとつは限らなねんだよ。なぁ、そうだろ?」 契約の力でひとつは救えても、他の大切な存在を傷つけてしまう。 「だから、契約を破ったんだ。対価を渡さなかったんだ。俺は欲張りだからな」 【でも……契約は力をくれた。大切なものを唯一守り抜ける力を無くしたらお前は…!】 「『俺達』には他の方法だってあるだろ?曲がりなりにも゛ラキサの民゛だ。 俺は自分の能力が無いことで自分を見限ったけどよ…。ちゃんと向き合おうぜ、腹くくってさ。」 保証はどこにもない。 あっさり野垂れ死にしてしまうかもしれない。 いや、きっとそうだ。 なのに、 ――――――なんで? なんでお前は朗らかに笑って見せるんだ? 【何故だ……お前は何故『俺』と違っていくんだ?『俺』は『お前』だろ? ……なぁ、どこが違うんだ? 何で『俺達』はこんなに違うんだ?】 闇が本来の姿に戻った。 等身大の俺。 ただ違うのは瞳の色が鮮血の紅に染まっていることだ。 【何が、何が…違うっていうんだよ……っ】 昔の自分がなんだかちっぽけに見える。 考えればわかることなのに。 どんな強い力を持とうとも、意志を固めようとも、それは全部まやかしのつよさにすぎない。 「なんだよ、わかんないのか?」 【……っ】 「お前だって惚れたくせに」 どこかで闇が砕ける音がした。 それは俺の心か、『俺だった』心が割れたのか、わからなかったけれど。 光がようやく見えた気がした。 ここからがきっと『俺たち』のスタートラインなのだろう。 [*前][次#] [戻る] |