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朧気な意識でも何となくは判っていた自分がいた。


「あなたは……?」



それでも口にしてしまう。

信じることが出来ない自分がいたから。



信じて裏切られてしまう事を恐れる自分がいたから。



「………大丈夫か?」


「………っ!」



ここはやはり、天国なのかもしれない。



月明かりにほんのり照らされた男の顔は、自分が今まで尽くしていこうと決めたアオイさんのものだったから。



「……嘘、だ…」


アオイさんが私をあの熱い眼差しで真っ直ぐと見つめている。

怖かった。



「…嘘だよね…、こんなの嘘…。あり得ないよ……あり得ない筈なのに……」


でもそれと同時に嬉しかった。


「そっか……これは夢なんだ。幻なんだ……私幻を見てるんだ……」


今まで酷く扱われていたけれど、神様は私を最後は察して素敵なプレゼントをしてくれたのだと微笑んだ。


最高の、最高のプレゼントだ。



絶対に、会えないと思っていた。

貴方にまた、出会えるだなんて。



「お、…おい…っ!」


チアキはアオイに抱きついてみる。


きっと今なら許される。これは幻影にすぎない。

ほんのひとときの夢にすぎないのだから。


だから、私の身勝手な行為もここでなら許される。


「アオイさん…アオイさんっ…」


またチアキは泣き出してしまった。

でも、彼女自身も判っていた。
これは嬉し涙だ。


こういう幸せに流せる涙なら、いつだって歓迎だ。


チアキは自分の顔がみっともなくても拭くことはせず、アオイに顔を上げて泣き続ける。




ああ、
どれほど待っていたのだろう。

このときを。



私はいつだって、貴方を求めていた。
貴方しかいないと思った。


暖かいスープを寝床をくれた事だけじゃない。





私に教えてくれたんだ、綺麗な空と、心と、そして優しいメロディーを。


私が考えた歌じゃない。



これはアオイさんが教えてくれた歌なんだ。
彼がいなければ私は歌うことも出来ない。



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