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短篇
リターン魔-6
「……お前達の……いえ、貴方達の魔王は」
「……あ?」
「爆散して死にました」

今起こった状況以上に、どうやら、今の狼人型の身体の事情側についても良く理解出来た。あれだけの陵辱を受けて力が抜けきってしまったという訳ではない。
どうやら単純明快に、力の出し方と言うのを忘れてしまっていたらしい。心を折られかけていたとしても鉄格子を思いっきり揺らしたり、身体をぶつけて破ったりするくらいの事はやっておくべきだった。

此方に向かっての手慰みとばかりに悲し気な瞳に、隠し切れない笑顔を浮かべながら力を取り込もうとしていた魔王。この世界で再来したと言い張っていた魔王。
単純な魔力や内在している力ではなく、心の拠り所とも言うべきか、意識の中に残っている芯までもへし折り、体のいい奴隷として扱う為の呪いであり祝福でもあった、のかもしれない。
笑顔のまま掌を通じて心臓と頭に回った辺りで、顔の穴という穴から怪しい発光を浮かべながら、気が付けば赤色の煙と内臓だったものの残滓を細々した塵と化して。

「な…………」
「……もう一度言います。先程まで多分普段通りに堂々と玉座に腰を降ろしていた貴方達が従えている魔王様は……爆散して死んでしまいました。多分魂諸共吹っ飛んだんじゃありません?」
「……な、何を言ってるんだよ…なぁにを言ってるんだって話だよ……姿を消したのも魔法によるものだ……そうだろうが……奴隷の分際でぇっ……!」

困惑と混乱を浮かべながら手元に握っていた斧槍を狼人へと差し出している。股間は一瞬で萎えきっており、良からぬ事が起きてしまったと認識はやれている様だ。
以前と同じ様に力を籠めるが、以前と同じく、魔界にいた時とは異なる何とも言えない反発が身体の内側で起きている感じがして上手く力を引っ張り出す事が出来ない上に心当たりも思い付いた。
毎日の鍛錬を重ね続けていた狼人型であるが捕らわれの傭兵として、奴隷として色々と何もせずずっと過ごしたのならば多少はなまりもするというもの。まだ本調子にはなれない。

なれないが、特に頭に命中してもこれといった問題はない斧槍の分厚い刃が振り翳されたのが目に入ったので片手で受け止めた。人差し指と中指の間で刃を挟み込んで、後はどれだけの力を入れようとも動く事は無くなった。
空いているもう片方の腕は奴隷印が刻み付けられた胸元に爪を添えてぐっと力を込めた途端に、見張り達ガ驚いているその目の前で片手が胸元の中へとべきべきと音を立てて飲み込んでいく姿を見せ付ける。
やがて真っ赤に染まった片手にどくどくと細かな拍動を繰り返している心臓が目に入った。血を流して胸元の毛並みを赤く染め上げながらも、その心臓そのものには奴隷印も何も刻まれていない。

「ああ、身体の方に作用する魔法でしたか……いけないですね。外から見る内に前ならば理解出来たものを」

衰えを自覚しながら、もう一人の見張りは手元に持っている斧槍さえもだらしがなく握った状態でぽかんと口を開けて狼人型の存在、魔界の住民という意味合いでの魔人をじいっと眺めるしかなくなっている。
自分もすっかり衰えちゃっていますねとまるで他人事の様に語りながら一度は体外へ引き摺り出した心臓を元通りに胸元に戻し、蜘蛛の巣を払うかの様に身体の表面に刻まれた奴隷印を毟り取った。
少なくとも見張り達にはそんな光景にしか見えやしなかった。改造された股間も今のふてぶてしさから何とも神秘的に恐ろしく見える。いや、意図的に治療を施してはいない。少し気に入ってる様に股間を軽く撫でてすらいるではないか。

口元には血の味がする。口を開いていなくても舌の上に仄かに乗った血の味、血の香り、目元を濡らす血の霧、この空間全体に広まっている魔王だったもの。
昨日まで、ほんの数分前までは確かに存在していた魔王の魂さえも完全に消し飛んでしまっていたのである。理解はした。暫く探せば諦めも付くものだっただろうが。
この狼人によって。ありふれた正義の名の下に魔王軍に反抗して、結局性処理用の奴隷として好きに扱われて、あれだけ淫らに開発されてたというのに。内心っで犯すのを楽しみにしていたというのに、

「ぬぁぁぁぁっ!?お、おま、お前っ、何しようとしてるんだっ……!」
「最初からこのつもりだったんですし今更こっちもちょっと予定が狂っちゃったんですね…考えが纏まるまで最初の予定通りにヤってしまいましょう。見て下さい、貴方の下着にも下着の中にもこんなに…魔王様が散布されているんですからね」
「だ…だがぁぁ!?魔王様の肉…血っほぉぉっ!?こんな場所で…そんな事……」「股間は出来そうで安心しました……仕方ないから落ちた体で……いや無理ですね。無理ったら無理です」

下半身の衣服をずらしてさりげなく股間を揉みしだく手付きであるとか。平気な顔で指と掌と肉球全体を使って刺激する内に、お預けを食らっていた見張りの股間は屹立し始める。
体格通りに立派に長く太い竿、そして日頃の習慣によるものなのか染みの付いた竿からは凶悪な雄臭が漂って来ている。開発を受け意識も蕩けた奴隷にとっては、貪る事こそが理想とも言えるだろう。
魔王によって一通り楽しまれた後、心の大事な箇所を抜き取られて正真正銘の奴隷と化した狼人を好きなだけ弄べただろう。

「それにこんなに立派なチンポしてて損って物でしょう…ああ、もっと貴方達の魔王が慎重だったら爆発しなかったのに……」

世界を統べる筈だった魔王には、他愛もない残念な話としての憐れみしか与えられやしなかった。

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