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「残念だ、もう少し拝んでいたかったんだがな。けどまぁこいつで怒りを抑制してもらわなきゃ死人が出かねねぇ。ここに居る奴らの為にも精々その見目麗しいツラを隠しててくれ」
ノアはそう言って愉快そうに俺を嘲笑うと眼鏡とバンダナを俺の方へと放った。
ノアの言葉を適当に聞き流し、左手でそれを受け取りながら俺は腕の中の男を解放する。
「悪かったな、手荒な真似をして。こっちも命がかかってるもんでな」
ナイフをしまい、眼鏡とバンダナを装着しながらそう告げると男に睨まれた。
「俺はてめぇが嫌いだよ」
投げ捨てるようにそう言い放ち、乱暴に椅子に腰を降ろす小百合と言う男に何と返すべきか考えていると、俺達のやり取りを見ていたハイジが俺の元にやって来た。
「何だよ、今度はてめぇか」
ハイジは俺を通り過ぎ、むくれている白髪の男の前で足を止めた。
「小百合、俺からのアドバイス何だけど兄ちゃんにゴメンナサイしてた方がいいと思うよ」
「…ぁあ?」
「兄ちゃん年下には甘いからちゃんと謝ったら許してくれるよ」
にっこりと微笑みながらそんな事を言うハイジに俺の心境は複雑だった。
「はっ、何で俺が謝らなきゃなんねぇんだよ」
「小百合がそれでいいなら無理にとは言わないけど…」
「…けど何だよ」
途中で言葉を切るハイジに小百合と言う男は舌打ちをする。
「兄ちゃんはした事は割りと直ぐに忘れちゃうけど、された事は絶対に忘れないから、また今日みたいな事があったら真っ先に逃げた方がいいよ」
「うわぁ…それって何気に最低じゃないですか。ラクハさんって見た目を裏切らず俺様主義なんですね」
小百合と言う男に対するハイジの助言を聞いてベリーズは感心したように口をはさむ。
…見た目を裏切らずってどう言う意味だ。
「俺様主義のつもりはねぇ」
俺がそう返すとベリーズは一瞬考えるように目を細めた。
「すみません、間違えました。俺様主義なんじゃなくてS体質なだけなんですよねラクハさんは」
ベリーズは一応フォローを入れているつもりらしいが残念ながらまったくフォローになっていない。
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