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あぁ、どうしよう。今は駄々をこねている状況じゃないのに。
そんな事よりもまず先に考えなきゃいけないことも、するべき事もあるっていうのに。
高ぶる気持ちを静めようと深呼吸をする俺に、ゼロは言葉を詰まらせたが直ぐに口を開いた。
「俺に出来るのは身代わりになる事くらいなんだよハイジ。俺の力じゃ誰も助けられない。自分すら守れない。…俺は弱いんだよ。自分の招いた事でもうこれ以上他人に迷惑かけたくなかったんだよ」
瞳に涙を溜めてそう訴えてくるゼロを見て、ゼロがずっと人知れず苦しんでいた事を知り、胸が軋んだ。
「何ごちゃごちゃ言ってんだよ。シカトしてんじゃねぇよ」
俺とゼロのやり取りを見て痺れを切らした小百合が俺達の会話を断ち切る。
「俺をシカトするなんて舐めた真似するなんてなぁゼロ。まだ躾が足りなかったのか?もう一度俺が体に教えてやるよ。お前は足を開く事しかできねぇただの奴隷だって事をなぁ」
「……やだっ」
「ゼロっ!!」
乱暴にゼロを床に抑えつけ、ゼロの上に跨がる小百合に我慢できず、小百合に駆け寄ろうとする俺を小百合は静止させる。
俺が近寄ればゼロを殺すと言わんばかりに、小百合は見せ付けるようにゼロの首を左手で圧迫してみせる。
絶対に許さない。
これ以上ゼロを苦しめたら殺してやる。
怒りに顔を歪ませる俺を見て愉快そうに笑う小百合の下で、ゼロが首を伸ばし俺の顔を見上げた。
「やっぱり…無理だっ…こんなの」
ボロボロと涙を溢れさせ、ゼロは縋るように俺の目を見つめてくる。
「怖い、怖いっ、もうやだ。お前じゃなきゃ嫌だ、これ以上ハイジ以外に触られたくねぇよ。
お前以外の男に触られるの嫌だ…っ!
助けろよっ…」
腕で顔を覆い隠し、叫ぶようにそう訴えるゼロの言葉を聞いて、重くて動かなかった足が、急に軽くなった。
「…なっ、こいつが死んでもいいのか…よ」
考えるよりも先に体が動いていた。
俺は小百合の言葉に耳を貸さず、ゼロの元へと走りよる。
「小百合がゼロを殺すのより、俺が小百合を殺す方が速いよ。
俺の大事な宝物に…何勝手な事してくれてんだよ。
そんなに俺に怖い事されてぇの?」
俺が小百合の胸倉を乱暴に掴み、ゼロの上から小百合を退かして床に叩きつけると、小百合の目が怯えるように揺れた。
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