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俺達は午後まで穏やかな時間を過ごし、試合観戦の為にロビーへと向かう囚人の波に乗ってロビーへと向かった。

俺達がロビーに足を踏み入れる頃には既に熱気が溢れており、人工密度が激しく増していた。


人の多さに軽い頭痛を覚えていると俺の前に道ができ始めた。

海が割れるように囚人が道を作る様子を見て、俺は向こうからやってくるであろう人物を容易に予想する事が出来る。

「あー、ひとでなし発見。何でお見舞いに来てくんねぇのー?まじムカつくー」

俺は相変わらずのふざけた笑みを浮かべながら俺に近づいてくるチェシャ猫の様子を観察する。

「昨日行っただろ。今日まで医務室に居るんじゃなかったのか?」

「居る訳ねーじゃん。俺医務室嫌いだし。それに何かウチに新人入ったみたいでさぁ。俺一応トップだし、居た方がいいのかなって」

チェシャ猫はそう言ってロビー中央に出来ているリングを見つめる。

「お前でもそんな事を考えるんだな。まぁでもお前が居ない方がありがたいと思うけどな。新人にとっては」

俺がそう言うとチェシャ猫はふにゃっとした笑顔をこぼして俺の左頬に下から上へと舌を這わせた。

体中に鳥肌がたつのを感じながらチェシャ猫を静かに睨みつける。

「俺の事なんだと思ってんの?俺だって一応アリスの森のトップやってんだから新入りの最期くらい見届けるよ。

ウチの子達、お宅の子達を殺れなかったからか興奮気味でさぁ。新人がアリスの森を引いたら多分血が沢山見られるよ?」

チェシャ猫は俺にそう言って視線を下げると、ハイジ、ゼロ、ベリーズ、と順に視線を滑らせていく。

「…何で今舐められたのか訳がわからねぇよ」

左頬を拭いながらそう訴えると、チェシャ猫は真顔でそこにラクハの顔があったから、と当たり前のように答えた。

左頬の消えない感触に眉を寄せていると、後ろから俺の首もとに腕が絡まって来た。

「な…何してんだよ。気安くクララの頬を舐めてんじゃねぇよ」

後ろを振り返り、僅かに目線を上げるとそこには拗ねたような顔をしたエドアンの顔があった。

エドアンは厳しい顔をして後ろから俺の左頬を何度も拭う。

俺はエドアンの気配に慣れ、警戒心を抱かなくなった自分の体の変化に少し驚く。




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