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「ハイジお前今日時間あるか?」
「ん?」
「色決めとサイズを計りてぇ。首輪作ってやる約束だったろ」
スプーンをくわえたままキョトンとしていたハイジはワンのその言葉で目を輝かせる。
「わ〜っマジで作ってくれんの?!でもワンワン忙しいんじゃないの?シンは忙しいって言ってたよ?」
ワンはハイジの言葉の意味を直ぐに理解すると、宥めるようにハイジの頭をポンポンと柔らかく叩いた。
「あー、新しく入った囚人の事か。問題ねぇよ、アレは明日までもたねぇ。よくて2、3日ってトコじゃねぇか?
ノアの箱船とエデンに入った奴らの面もさっき見て来たが、そいつらも長くはもたねぇと思うぜ?
今回入った奴は全員ノーマルみてぇだからな」
ワンの言うノーマルと言う言葉の意味がわからず、俺は顔をひきつらせてハイジとワンを交互に見つめるエドアンに意味を尋ねた。
どうやらノーマルと言うのは殺人以外で入って来た囚人や軽犯で短期間で出所していく囚人の事らしい。
俺とハイジには全く関係のない言葉だな。
「兄ちゃん、今日はどうするの?俺ワンワンの所に行ってもいい?」
ハイジは期待を込めた眼差しで俺を見つめてくる。
おそらく新人歓迎パーティーをしている間は囚人がロビーに集まる為、比較的安全だと思える。
問題はワンとハイジを2人っきりにしても大丈夫なのかと言う事だった。
ワンはそんな俺の不安を悟ったのか、俺の顔を見て顔をしかめた。
「安心しろよ。てめぇとそこの糞チビは気にくわねぇがハイジは嫌いじゃねぇ。心配なら帰りは俺がハイジをネバーランドまで送って行ってやってもいいぜ」
ワンが俺とベリーズを見てそう言うと、ベリーズは小さな悲鳴をあげる。
あからさまに上から目線で俺に言葉をかけてくるワンを見て、ベリーズが何度もワンに衝突した事を相当根に持っている事がわかる。
「わかった。くれぐれもハイジの扱いには気をつけろ。ヤバいと思ったら直ぐに俺を呼びにこい」
小声でそう忠告すると、ワンは少し驚いたような顔をして一度ハイジの方を見ると口端を上げた。
「心配してんのはそっちかよ。まぁ確かにあんなタチのわるいモンを野放しにしとくのは問題だとは思うけどな。安心しろよ、俺はここでは一番危険物の取り扱いに馴れてる」
チェシャ猫を筆頭に、危険人物の多いアリスの森で生き抜いているワンのその言葉にはかなりの説得力があった。
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