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「違うから、取り合えずちょっと待って。お願いトイレに行かせて、じゃないと俺ゼロに手を出しそう」
ゼロは立ち上がりそう告げる俺の下半身にゆっくりと視線を降ろし、俺の言葉の意味を理解すると、顔を真っ赤に染め俺を眼力で殺す勢いで睨みつける。
「出すな馬鹿っ、俺にそっちの気はねぇ」
ゼロの罵声と共に飛んできた枕を顔面で受け止めた俺はどうにも理不尽を感じて仕方がなかった。
「何か納得いかねぇんだけど…。何なの一体。俺ゼロがずぇんずぇんわかんねぇ」
「俺も俺にキスして立たせてるお前がわかんねぇよ!!つーか仮病使ってんじゃねぇよっ!後舌入れんなっ!!」
「何さ舌ぐらい。ワンワン何てガッツリだったよ?第一あんな可愛い顔で、泣きながらキスして何て言われたら舌の1つも入れたくなるって」
「っ…キスして何て言ってねぇよっ!」
ゼロと言い合いをしながら俺は内心ゼロの涙が止まった事にホッとしていた。
泣かれるよりはまだ怒られた方がね。
だけどどうしたらいいんだろう。
俺キス好きだし、過剰に喜びや楽しさ、感謝の気持ちを伝えたい時ってあるじゃん。
ゼロはやめなくていいって言ってたけど、やめなかったらまた泣かせちゃうかもしれないし。
ゼロもキスが好きなのかなって思ったら違うみたいだし。
キスしてって言うからキスしたのに怒られるし。
取り合えず壁を叩いてシャワールームへと入り、鏡の横に設置された水色の便器に腰を落ち着け事を済ませる。
いつもなら何か困った事があったら真っ先に兄ちゃんに相談するんだけど、こう言う問題は兄ちゃんには相談しにくい。
…多分兄ちゃんを困らせちゃうだろうし。
結局何のいい考えも浮かばず、悶々としながらシャワールームを出ると丁度兄ちゃんが帰って来ていて。
兄ちゃんに渡されたパンと牛乳をゼロと分け合いながら食べている内にお腹がいっぱいになって。
お腹が満たされたら眠くなったので、シャワーを浴びて歯磨きをして寝ることにした。
ゼロと変な空気のまま今日を終えるのが嫌だったので、どうしようか迷ったけど俺はゼロのベッドに潜り込んだ。
ゼロは変なものを見るような目で俺を見ていたけど。
俺はそんなゼロをよしよしと撫でながら欠伸をし、ゼロを抱きこむ。
やっぱりゼロは温かいなぁなんて思いながら俺は目を閉じた。
お腹もスッゲェ痛いし、疲れてるし、難しい事は明日考えよう。
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