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―side RAKUHA―

ネバーランドに戻るとハイジとゼロの様子が妙だった。

ハイジに何かあったのかと尋ねても困った顔をして首を横に振るので、俺は深く追求しなかった。

万が一に備えて消灯時間を過ぎ、皆が寝静まってからも俺は1人起きていた。

起きている間、チェシャ猫に言われた言葉や今日1日囚人達に絡まれた事を何度も思い出し、気分は最低だった。

ハイジが居なくなったら俺はどうなるのか、俺の中で既に結論が出ている。

俺が今存在出来ているのはハイジがいるからだ。

ハイジが俺を必要としているから。

ハイジが俺に居場所をくれるから俺は前を向いていられる。

だからハイジを失う事なんて考えたくはない。

この日俺がベッドに入ったのは明け方近くだった。

浅い眠りは俺の中では寝ていないのと同じだ。

何故なら過去の記憶が永遠に再生され続けるからだ。

ハイジもそうだと思うと殴って気絶させてでも夢を見る余裕もないくらいに深い眠りにつかせてやりたくなる。

暫くの間、頭の中で再生される自分の惨めで見窄らしい姿を客観視していると、遠くで音が聞こえてきた。

その音で現実へと引き戻された俺は、重い頭を上げて時間を確認する。

まだ起床時間よりもだいぶ早い。

それなのに外は騒がしい。

それは危機感を感じるようなものではなく、賑やかだと言った方がいいのだろうか。

時折聞こえてくる笑い声を聞きながらもう一度時間を確認して俺は原因を悟った。

もう日付が変わっている。

「兄ちゃん兄ちゃんっ!フック船長が戻って来た!!」

鉄格子を乱暴に開け、嬉しそうにはしゃぎながら現れたハイジによってそれは確信へと変わった。

エドアン帰還の事実を知り、肩の荷が降りたかのような感覚がして思わず深い溜め息がこぼれ落ちた。

エドアンには言ってやりたい事が山ほどある。

そう思い、俺の腕を引っ張り外へと連れ出そうとするハイジに身を任せていたが、房の外へ体を出した所でふっと我に返る。

俺はネバーランドの囚人から怪我人を出してしまった。

もっと巧くやれば怪我人を出さずにすんだかも知れない。

そんな俺にエドアンはきっと失望するに違いない。

そう思って動きを止める俺をハイジは不思議そうに見上げる。


ハイジだけを皆の居る所へと行かせようとしていると、遠くに小さく見える黒い人影がこっちを振り返った。




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あきゅろす。
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