206 「血の繋がりに何の価値があるのかわからない。 血が繋がってないから何だって言うんだ? 血が繋がっていれば絶対的な絆や愛情があるとでも言いたいのかよ。 第一アンタには関係のない事だろ」 小百合と言う男が大人しくなったのを確認してノアにそう言葉を返すと、そんな俺に続くようにハイジも口を開く。 「同感同感。もし兄ちゃんが血の繋がった本当の兄ちゃんだったらアイツ殺した後に俺兄ちゃん殺してたかも」 「あぁ。俺も確実にお前を殺してその後に自殺してただろうな」 俺がそう言うとハイジはそれも悪くなかったかもね、と面白そうに笑った。 黙って俺達のやり取りを見ていたノアは顔をしかめ静かに深い溜め息を吐き出す。 「…知れば知るほど理解不能だな。アリスの森のあのサイコ野郎程ではないがお前らも相当だな」 うんざりしたように小さく首を左右に振るノアに何で俺はこんな話をしているんだと我にかえる。 「それでアンタの答えはどうなんだ。 俺とのこの取引に応じて誰にも邪魔されずにハイジを独占するか、それとも今ここでハイジを無理矢理連れて行くのか。止めに入る奴が居ないんだ、アンタのやりたい放題って訳だ」 挑むようにノアに言葉をぶつける俺にノアは呆れたように片方の眉を上げる。 「俺が断るとは思わないのか?俺が断らないと踏んでいるその理由はなんだラクハ」 「俺がアンタなら断らない、それだけだ。アンタが断った場合、俺は二度とアンタと話し合いを持とうとは思わねぇし、話を聞く事もなくなるな。 したくはないが方針も変えざるを得ない」 俺が真面目な口調で言ったにも関わらずノアは俺の話を聞いて笑い声をあげた。 「因みにその方針ってのは何なんだ、言ってみろ」 半笑いでそう尋ねてくるノアに眉をひそめながらも俺は口を開いた。 「もう二度と殺しはやらない。 そしてハイジにも二度と人を殺させない。 これが今の俺の方針だ。 だがアンタが俺のこの話を断り、3つのエリアの囚人達から総攻撃される展開になってしまうようなら仕方ない。 自分達の身を守る為だ、やりたくはないが俺は確実に俺達が無事で居られる方法をとる」 ハイジから渡された半分残った夕食のトレーからパンを手に取り口に入れながらそう返すと一瞬で辺りが冷気で満たされた。 静けさと冷たい空気を肌に感じ居心地の悪さに俺は気づかれないように小さく舌打ちをした。 BackNext [戻る] |