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「…何でアンタがハイジの年を知ってるんだ」
ノアの言葉によって静止した男の俺の胸ぐらを掴む腕を払い退けながらそう尋ねると、ノアは俺同様不思議そうな顔をしているハイジと俺を見比べながら口を開いた。
「今朝ラクロからお前らの細かいデータを手に入れたんでな。キーマンの事もあってそこら辺は明確にしておく必要があったもんだからよ。
…どうやらお前の言っていた事は全て本当らしいな。親殺したっつーのも、Dark holeの囚人を殺しまくって爆破させたっつーのも」
ノアのその発言によって辺りは静まり返った。
散々俺達に投げかけられていた下品な言葉は嘘のようにぴたりと止んだ。
…成る程な。だからハイジを無理矢理連れ去ろうとしなかった訳か。
俺がノアの出方を探っているようにノアも俺達の出方を見ている。
当然と言えば当然か。
エドアンやチェシャ猫が少し変わった思考の持ち主なだけであって、客観的に考えれば俺達は危険な要注意人物だ。
ノアは俺の予想以上に慎重でありノアなりにノアの箱船の囚人の事を考えている。
だが、俺達の事を多少なりとも警戒していると言うのならハイジとじっくり話がしてみたいだなんて言うものだろうか。
疑問を新たに1つ増やしていると再び胸元を乱暴に掴まれギリギリと締め上げられる。
俺は仕方なく視線を目と鼻の先に居る人物に戻した。
「だっ、だから何だってんだよ。こいつが腰抜けだって事には変わりはねぇっ」
焦りを隠すように無理矢理向けられた、力がまともにこもっていない拳によって俺の左頬は殴られた。
男が拳を戻すのと同時に掴みかかろうとするハイジを腕で抑えながら俺はじんわりと鈍い痛みが響く口端を拭う。
「何で止めるの兄ちゃん!!一方的なのは許せないよ俺」
「…いいから、お前は飯を食ってろ。話が進まねぇ」
静かにそう告げる俺にハイジは渋々と言った表情で椅子に腰を降ろした。
「もう気が済んだだろ。頼むから席についてくれないか」
男の目を見つめそう訴える俺を見て白髪の男は顔を強ばらせ小さく喉を鳴らした。
「はっ、とんだ腰抜けだな。萎えちまったぜ」
聞こえよがしに舌打ちをしてテーブルを降り、乱暴に椅子に腰を降ろし再びテーブルの上に足を投げ出す男に俺は心の内でため息をついた。
微かに感じる血の味にイラだちを覚えながらも俺は話を続ける為にノアの方に向き直った。
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