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モノクロなる恋模様
七話:脅し≒口説き


※視点が変わります
(藍人side)


俺は不機嫌だった。

理由は三つ。


一つ。
寝ていて無防備なところをコイツに触られたから。いくら軽くであれ。

二つ。
気持ちよく寝ていたのに、邪魔されたから。こんな暖かい日なかなかない。昼寝を邪魔されるほど鬱陶しいことはない。


三つ。
コイツが近づいてきたのに、気配を感じ取れなかったから。中学時代は寝込みを襲われても大丈夫だったのに、この距離じゃコイツに襲われていたはずだ。感が鈍くなっている。


これらの理由から、反射的に俺がとった行動は、触れてきたコイツの手首を掴んで捻り上げ、地面に倒したあと、上に乗って、自分の体でコイツの四肢を封じ込めた。両手首をまとめて一本の手で掴み、もう片方はコイツの顔の真横に置いた。
この状態なら、色んな痛め付けかたができる。


「ねぇ…あの、ごめんなさい」

「…許さねぇ」

「…あの、何する気ですか」

「さぁな、今考えてる」

思い切り睨み付ける。至近距離まで顔を近づけて、目を合わせようとすると、コイツは目を逸らした。

「…オイ、こっち見ろ。目ぇ逸らしてんじゃねーよ」

低い声で囁くと、体をビクッと揺らして、一応こっちを見た。
その反応を見て、名案を思い付いた。いつもいつも付きまとってくるから、たまには脅してやろう。一度ビビらせれば近よらなくなるだろう。あくまで言葉だから、風紀委員も関係ない。


「…あの…まさか俺を襲うとかは…」

その少し怯えたような声と言葉に、ニヤッと笑い、

「あァ?先に襲う気だったのはテメェの方じゃねぇか…ヤらねぇわけねぇだろうが」

「…ぇ…ぁ、ちょ…痛そうだし……」

「痛そうだァ?んなの知るかよ…」

「…い…や、…ぇ…」


ここで、中学時代一番効果があった脅し文句。


「さァ…どんな風に泣くんだろうなァ…?」

「…ッ、ぁ…」

よし、これでだいぶビビってるはずだ。そろそろ離して、逃がしてやってもいいか。本当に暴力ふるったら後が面倒だし。

すると、


「…オイ、何顔紅くしてんだよ」


すると予想外なことに、顔が恐怖じゃなくて紅く染まっていた。なんで脅されて紅くなんだよ。わけわかんねぇ。
とりあえず聞いてみたが、返事ができなさそうだ。


「…聞いてんのか?何顔紅くしてんだよ」

「…ぁ、いや、ちが…」

「チッ…つまんねぇ」
体をゆっくりと起こし、立ち上がった。その間も、目を見て睨み続ける。相変わらず顔が紅い。意味がわからない。

最後にまたビビらせようと、吐き捨てるように言った。


「…ッたく…泣いてる奴みてんのが楽しいんだろーが…二度と俺に近寄んな」

制服を軽く払い、その場所から立ち去った。



※視点が変わります
(とおるside)




「…はぁ…」

藍人が行った後、体の力を抜いた。強張っていた分楽になった。

それにしても…



体が熱い。鼓動がめちゃくちゃ五月蝿い。手足が若干震えている。

本当にドキドキした。恐怖ではなく、完全に照れた。恥ずかしさでいっぱいだった。
髪に触れたとたん、素早い動作で体を押し倒され、至近距離で見つめられて、低い声で囁かれて。正直、なんの抵抗もできなかった…というか、しなかっただろう。
あの声が、あの顔が、あの匂いが、あの感触が、全て魅力的だった。

しかも、こいつになら抱かれてもいい、と思った直後だったから、ビックリもした。
寝ているときのあどけない顔と、さっきのS気たっぷりの顔のギャップが強すぎる。




目を瞑って、深呼吸をする。
深く吸って、深く吐いて。




ダメだ、

胸の拍動が



…収まりそうにないや。



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あきゅろす。
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