モノクロなる恋模様 六話:寝顔 ※視点が変わります (とおるside) 腹に一発決められたあと、俺はまた藍人を探しにいった。…あーまだ痛いんだけど。 五日間ストーカー紛いの行動を続けてみて、校内の敷地にやたら詳しくなった。藍人はいつも素っ気ないし、無視するし暴力的だけど、俺の中にある好奇心はとどまることを知らない。毎日毎日同じようなことばっかしてるけど、正直つまらないと感じたことはない。常に面白かった。何が、と聞かれれば具体的にはわからないんだけどな。 ここ数日の藍人の行動から、藍人はとあるポイントを基点に校内を徘徊していることが分かった。そのポイント自体行ったことはないけど、なんとなく分かる。 一人寂しく、森みたいな道を、そのポイントに向けて歩く。草や土を踏みしめる感覚が楽しくて、藍人が惹かれてるのも分かるような気がする。 しばらく歩いていれば、急に森が開けて、庭のような場所に出た。 芝生が辺り一面に広がっていて、その中央には、大理石でできた休憩所みたいな?なかなか涼しそうだった。夏はあそこで昼寝してぇなー。藍人と一緒に。まぁ許してくれるとは思えないけど。特にこの学校は男子校のせいで、ホモだのゲイだのが山程いる。それ目的で入ってくる奴もいるくらいで、隣で昼寝したいなんて言ったら藍人に警戒されちゃうだろう。俺はノンケだけどねw。 わりと広い庭園を、ぐるっと見渡したら、芝生に寝転がっている学生を見つけた。明らかに藍人だ。大声でも出してやろうか。いや、殴られるな。ここは、気配を消して、こっそり近づいてみることにした。あの可愛い寝顔見てぇし。ビックリさせても面白…いや、殺されるな。 芝生を踏みしめる音に気を付けながら、ゆっくりと藍人に近づいていった。それにしても柔らかい芝生だ。ここで寝ても気持ち良さそう。 残り10メートルでさらに慎重になった。先ほどよりも音や気配を消すことに集中する。まぁ気配の消し方なんて知らねぇけど。足音に注意してればいっか。幸い近くに木が少なくて、葉っぱとかは落ちてない。あードキドキするw。 残り5メートル。 この分だと起きなさそうだ。肩が上下に揺れてるのが目視できて、ニヤリと笑った。やべ、俺不審者感満載だわ。 残り2メートル。 もう寝顔も確認できる距離だ。起きる気配もないし、爆睡してるようで、案外簡単に近づけた。未だにドキドキすんなぁ。 ギリギリ触れる距離のとこで腰を下ろした。最初あんなに慎重にしなくても、起きなかったかもしんない。 視線を、寝顔に集中させた。前テストを受けたときにも見たが、普段あんなに怖い雰囲気を持ってるのに、寝てしまえばそこいらの女子より可愛い。あどけない、というか無防備というか。不良じゃなかったら初日で襲われそうな感じ。その点不良でラッキーだ。 あんまり顔をしっかりと見たことはない。覗き込むと怒るし、正面に立つとそっぽ向くし。だから、なんかレア感半端ない。てゆーかイケメンだよな、藍人って。彼女とかすぐできるだろ。 無造作に散らばりつつもさらにイケメンさを助長している髪の毛。バランスが良い顔のパーツの一つ一つもこれまた綺麗で、すらっとした輪郭を含め、神を恨みたくなるほど整った顔立ちだった。首も細くて、肩幅はあんまり広くないけど、筋肉はしっかりついている。腰は細くて、足はだいぶ長い。全体的にもバランスがとれた身体だ。 ん?俺男の顔見て何考えてんだ?カッコいい?イケメン? いや待て待て待て。 俺はノンケのはずだ。男になんか興味ないはず。可愛い寝顔とか言ってたけど、それはあくまで客観的にみた感想で、好意を持ったりもしていなかった。 でも、今はどうだ。 至近距離で見たら、俺自身の感想としてカッコいいとか可愛いとか言ってた気がする。 いやコレマジで。 ホモやゲイに偏見はない。誰が誰を好きになろうがソイツの勝手だし。だからこそこの男子校にも入れた。志望動機は親に進められたからだけど。だが、今度は見る側だった俺が、惚れる側になりかけている。 …よし、一回理性とか捨てて考えてみよう。頭真っ白にして。 …藍人ってイケメンだよな。…なんか、こいつになら抱かれても抱いても良いような気がする。初めから興味を持っていたのは、恋愛対象としてだったのだろうか。 髪の毛が数本、目にかかっていた。邪魔くさそうだし、人差し指で軽く払いのけようとした。 その時、 【*前へ】【次へ#】 [戻る] |