『看病はお好き?』10万hit! 『お野菜はお好き?』朝比奈×翔汰。 両想い設定。18禁。 思えば、朝から様子がおかしかったんだ。 「けほ、」 「…大丈夫?」 軽い咳をしながら、無意識に喉に手を当てた朝比奈に気付いた。 「…何が?」 ダルそうにソファーに寄りかかって問題集に目を落としている朝比奈は、平気なふりをしていたがやっぱりちょっと声が掠れている。 「風邪、引いたんじゃないの?」 今日は土曜日だ。 やっぱり外で会うのは立場上宜しくない俺達は、付き合うようになってから身内である無限に会いに来るという名目で休みになると部屋に入り浸っている。 所謂、お家デートってやつで、今日の朝比奈は勉強に勤しむつもりらしい。 毎回する事はまちまちだけど、休みの日に勉強するくらいなら授業サボるなよ!って思うのは教師なら当たり前だと思うよ。うん。 …まあ、俺の仕事に合わせてくれてるって気付いてるけどさ。 そんな感じで同じ空間を共有するのは結構気に入っていたが、持ち帰った仕事をしていた俺は、朝比奈の小さな変化に気になってあまり仕事がはかどらずにいた。 大丈夫だと頑なに言う朝比奈は、心なしか少し顔が赤い気がするし、絶対に声だって掠れてる。 どうしても気になって朝比奈に近付くと、そっと額に手を置いてみた。 「っ!?熱いじゃん!」 予想以上に高かった体温に驚いて声をあげると、まさかいきなり額を触られるなんて思ってもいなかったらしい朝比奈が驚いて少し身を引いた。 「駄目!横になって?今ベッド用意するから。」 慌ただしく立ち上がり寝室に急ぐ俺に「大丈夫だから」と呆れ気味に呟く朝比奈は、自分がどれほど高熱なのかわかってない! 心配からムスリと不機嫌になりながら、急いでシーツを整えると、 「いいから行く!」 ピシッと寝室を指差して朝比奈を促した。 「…はいはい。」 ◇ ◇ ◇ …本当、大丈夫なんてどこの口が言ったのか。 しぶしぶベッドに横になった朝比奈は、驚く事に三十九度近くの高熱だった。 一度横になってしまえばやっぱり体調が良くなかったみたいで、あっという間に寝息を立てる朝比奈に苦笑いしながら氷枕を用意する。 …強がっちゃって。 高熱の所為でうっすらと上気した頬と、あまり見ることのない寝顔を眺めていると、どうしても弱気になってしまう。 俺は、そんなに頼りないんだろうか。 だって、こんな熱があるのに「大丈夫」としか言われないのって、やっぱり辛い。 …頼って欲しいとか、俺のわがままなのかな? なんだか泣きたくなって顔を歪めると、こんな時に落ち込んでいる自分が嫌で寝室を出た。 …とりあえず、今出来る事をしよう。 解熱作用のある薬を用意して、消化に良いものを作って。 飲み物は、買ってこなきゃだな。 あと着替え。 俺のは小さいし、どうしよう。 とりあえず財布を片手に部屋を出ると、ちょうどエレベーターのところで無限に出くわした。 「よ、どうした?んな慌てちゃって。」 「無限先生…」 そんなに態度に出ていただろうか。 俺を見て、そう声を掛けてきた無限に眉を下げると、 「朝比奈が風邪引いたみたいで…」 今、俺の部屋で寝ているんだと伝えると、着替えを貸してくれると申し出てくれた。 俺とは違って体格差があまりないから助かる。 「ありがとうございます。」 「別に。そんくらいお安いご用だぜ?帰りに部屋に寄りな、用意しとくから。 あ、下着は買ってこいよ。」 「はい!」 良かったなんて喜びながら、何度も何度もお礼を言い店へと駆け出した俺は、 「熱、ねぇ…」 俺の後ろ姿を見送りながら、無限が楽しそうに口元を歪めていた事に気付かなかった。 ◇ ◇ ◇ 「飲み物OK。下着も買ったし…」 …あとは何がいるだろう。 食事は雑炊にして。あ、ゼリーとか食べるかな? 色々買い込んだ俺は急ぎ足で社員寮へと戻った。 部屋に戻る前に、隣室の無限を訪ねると、 「ほい。着替えな。」 「すみません。助かります。」 用意して待っていてくれた無限にお礼を言って、立ち去ろうとドアに手をかけた。 「待った待った。」 「はい?」 正直、早く部屋に戻りたい。 なんの用だろうと首を傾げると、真剣な顔をした無限が俺を見つめていた。 「…なんですか?」 「知ってるか?手っ取り早く熱を下げる方法。」 …熱を下げる方法? 「座薬とかですか?」 でもそれは朝比奈が嫌がると思う。 だって朝比奈だし。 訝しげに無限に答えると、「それは夕陽が嫌がるだろう」と俺と同じ答えが返ってきた。 まあ、当たり前だろう。 「違う違う。アレだよ、ア・レ。」 どれだよ! 「せっ・く・す」 「………………はぁっ!?」 いやいやいやいや!無いから! 無限の言葉に「ないない」と首を振る俺は、「知らないの?」と無限に呆れ顔で言われて戸惑った。 …え?ないよね? そりゃあ、エッチすると熱が下がるなんて、よくエロ本とかにありそうな話だけど、それって二次元。実際には迷信ってやつだろ? 騙されるもんかと無限を見ると、 「実際、俺は熱が下がった事あるし。 辛そうなら試してあげたら?恋人にしか出来ない事だぜ?」 「……。」 …まあ、そうかもしれないけど。 黙り込んで目を伏せた俺に、無限はもう一押しとばかりに優しい笑みを浮かべて頭を撫でた。 「…アイツさ、普段つっぱってて弱音とかめったに吐かないんだよ。」 …うん、知ってる。 さっきもそうだったし。 「でも翔汰先生には結構甘えてると思うんだよな。」 「え?」 「優しく抱き締めてやってよ。」 つい、コクンと頷いてしまった俺は、いそいそと部屋に戻る俺を見送った無限が、口元を押さえて涙目になり肩を震わせながら笑っていたとは想像もしなかった。 next→2 [*前へ][次へ#] |