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…7。




学園マップなるものを広げながら、やれ音楽室だ、視聴覚室だ、あっちの建物は図書館だと、一つ一つ丁寧に教えてくれる所をみると面倒見がいいのかもしれない。

…ぶっちゃけ顔に似合わないけど。



しかし広い。
広いのは外観からもマップ上でも明らかだったが、自分の足で歩くと更に実感する。


春休みという事で、当たり前だが校舎に生徒の姿はなく、シーンと静まり返った校舎は何だか不思議な感じがする。

それでも運動部の掛け声が遠くから聞こえてきて、ついこの間まで学生だったな、と懐かしさを感じていた。




「あそこの奥に見える屋根が武道場で、その奥にも何棟か建ってるから。
体育館はあっちとそっち。講堂はあそこにある。」


うん。既にこんがらがってきたぞ。
てか、体育館ってそんなに必要?グラウンドも第一から第三まであるって何よ?どんだけよ?

どうやら各部活動同士のいざこざを避けるため、無駄に広い土地を最大限に利用しているらしい。維持費だけでも相当かかる事だろう。金持ちってすげぇ。



「そして、ここが第一生物室と準備室。隣から順番に第三まである。
丁度この上が第一科学理科室で、下が化学室な。」


理科だけでどんだけ教室あるんだよ!

ついそんなツッコミを心の中で入れていると、


「はい。」
「?」

差し出された手が目の前でプラプラと何かを揺らしていた。


…鍵?


「好きに使っていいって。」



マジすか!


準備室の鍵を手渡され思わずお礼を言うと、いそいそと中に入った。

なる程、ホルマリン漬けの蛙や人体模型など、生物学と言えばコレ!と思われる器具が並んでいる。
ここを自由に使えるかと思うと嬉しくて仕方ない。


キラキラと目を輝かせた俺を見て、ボソッと「…んな薄気味悪い部屋がそんなにいいもんかね」なんて聞こえてきたが、俺に取っては宝の山だ。
気にしない、気にしない。



「一応言っとくけど、生物教師は各学年に二人ずついるから使うのは二人でだから。」


…あ、なんだ一人じゃないんだ。

といっても他の教員は既に役職や何やら兼任で既に自分のテリトリーがあり、授業以外でここを使う事は稀らしい。
だから実質“好きに使っていい”という事だが。
そう考えると、新任で授業以外特になんの役割もない自分が、こんな広い個室を自由に使える事が何だか申し訳ない気持ちになった。






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