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…5。




「理事長は今日は不在なんだ。まあ、座ってよ。」
「はっ!ありがとうございます。」


慣れない豪華さに緊張しながら体が沈みそうなソファーに腰掛けると、「硬いね」なんて笑われてしまった。

ちょっとだけ緊張がほぐれた気がする。




「…てか、夏兄ってどこかのお屋敷で働いてるとかなんとか聞いてたんだけど、理事長補佐?代理?って何?」

「…ああ、ずっと雇ってくれていた方が先日亡くなってね。
ここはその方の資産の一つなんだよ。」
「へぇ。」



そんなに凄い人物なら新聞にも載っていたかもしれないが、普段死亡欄なんて確認しない俺は全然知らなかった。



「他にも沢山の事業に手を広げていて、…凄く素晴らしい方だったんだが…。」



悲しそうに目を伏せる様は、長い睫毛に水分でも含んでいそうなほど愁いを帯びている。

けど、決して泣いているわけではなく、ちょっと寂しそうに微笑みを浮かべただけだった。


「今はお孫さんがその全てを相続されてるんだ。勿論、その方がここの理事に就かれているんだよ。」

「へぇ…」



…孫って事はそれなりに若いのかもしれない。

例えば前理事が七十だったとして、その子供が若くて四十?

そうなれば、まだ未成年という事も考えられる。


「実は今年から高等部一年に入学されるんだ。」
「へぇ……え!?」


「秘密だよ?」なんて人差し指を口元に当てる仕草はノンケな俺でもうっかりトキメキそうなくらい格好いい。というか綺麗だ。


しかし、それにしたって大丈夫なのか?なんて少し不安になってしまう。
そんな子供に理事なんて務まるんだろうか。



「大丈夫だよ。だから私が補佐兼代理をしてるんだから。」


…あー。うん納得。
夏兄なら任せられる。そんな感じがするかも。

しかも他に身寄りがないとかで後見人として成人まで面倒を見ることになっているらしい。
夏兄って色々凄い。







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