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…4。
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「…はぁ。」


重い溜め息を吐いたのは、これから会う人物が嫌だとかそういうものじゃない。
つい、最愛だった彼女との別れを思い出したからだ。


本当に本当に大好きだったんだ。

柔らかい笑顔も、ちょっと拗ねた時の顔も。
「美奈ちゃん」って呼んだときに優しく返事をくれる所も…。

あれからお互いにバタバタと忙しくなって会う機会がめっきり減って。
昨日、最後にしたメールでは……うん、大手のサークルさんが新規に手を出したとかで、文字制限数いっぱいまでその素晴らしさを語られましたが何か?
俺の事なんてこれっぽっちも心配してない一方的なものでしたが何か!?

切ない気持ちでいっぱいになってマジへこみしました。

ほら今もうっかり泣きそうになるくらい…。




すぅ、と一呼吸置いて何とか気持ちを追いやると、目の前のやけに重圧感のある高そうな扉を叩いた。



コンコン。


「どうぞ。」
「失礼します。」


中からした声に扉を開けた俺が見たのは、なんというか、『豪華』としか言いようのないこの学園のさらに豪華な理事長室だった。


歩いたら足が埋まる…とまではいかないが、「掃除とか大変そうだな。」なんて思わず思ってしまう程の臙脂色の絨毯を踏みしめると、久々に会う懐かしい従兄弟の姿に頬を緩めた。




「この度こちらの学園に赴任する事になりました、新任の原田翔汰(はらだしょうた)です。よろしくお願い致します。」



マニュアル通りの挨拶を済ませると、ふわりと見知った顔が笑いかけてくる。



「私は、理事長補佐兼代理の静谷夏樹(しずたになつき)です。…って知ってるか。」

「うん!夏兄、久し振り!」
「ああ。…翔は相変わらず可愛いね。」



いや、本当に懐かしい。
一回りも離れた従兄弟に会ったのは、それこそ十二年振りかもしれない。

確か、大学を卒業した後その手腕を買われてどこかの金持ちの秘書をしている事は知っていた。

とても多忙らしく年も離れている所為でめっきり会う機会もなくなってしまったが、それでもよく遊んで貰った記憶がある。


あの頃からスラッとした清潔感のある知的な印象だったが、今目の前に立つ夏兄はそれに大人の色気が加わっていて、男の俺から見ても格好いい。

深い色合いのツーボタンのスーツに、高そうで洒落たネクタイと靴。


そうだな、どちらかと言えば受けっぽい。
あ、淫乱受けとかにしたら最高かもしれない。
普段はきっちり着込んだスーツを乱しながら喘ぐ…はっ!

なんか後半がおかしな感想になってた。美奈ちゃんの影響ですっかり腐男子化してる!ヤバいヤバい。







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あきゅろす。
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