…20。
「…何してんの?HRサボってさ。」
突然後ろから声を掛けられてビクッと肩を揺らした俺は、振り返る事が出来ずに固まってしまった。
背後に立った人物の聞き慣れた声は明らかに不機嫌なもので。
…それはそうだろう。
副担のクセにHRをサボったんだから。
「…何か言えよ。」
「、……。」
苛立ちの増した声が近付いてきているのに気付いた俺は、涙で汚れた情けない顔を見せたくなくてどうやって誤魔化すかを必死に考えた。
だって、これ以上惨めになりたくない。
とっさにキュ、と更に蛇口を捻り、勢いの増した水道水に頭を突っ込むと、
「はっ!?何やってんの!」
いきなり頭から水をかぶった俺に慌てた無限が、走り寄って俺の肩を引こうとしたが、水道台の端を掴んでそれに耐えた。
「ちょっ、マジで、風邪引くぞ馬鹿か!」
さっきより強い力で引かれ流石に耐えることが出来なくて、ボタボタと水滴とは言い難い量の落としながら仕方なく顔を上げた。
「なんでもないです。」
「……」
やっぱり苦しいだろうか。
いくら即席で涙を誤魔化し冷やしたとしても、多分目は赤いし、もしかすると腫れているかもしれない。
「…何があった?」
やっぱり誤魔化せなかったみたいで、いつもよりいくらか低い声でそう問われ、視線をずらした俺は、
…何でもない、じゃ駄目かな。
だって言いたくない。
馬鹿にされるかもしれないってのもあるが、これ以上この人に弱みを見せたら駄目な気がするんだ。
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