…15。
そのまま敷地内に入ると、ちょうど授業中で生徒達の姿はなかった。
誰もいない校内は、遠くに生徒達の気配は感じるものの、どこか背徳的な気分になるのはなんでだろう。
まるで、休日の学校に忍び込んでいるような…。
やっぱり手を繋いでいるからかもしれないと、握られた手を見た後、その先に繋がる朝比奈に視線を向けた。
「……ぁ、」
「あ?」
…なんだそうか。
テンパってた所為で気付かなかったけど、朝比奈が私服なんじゃん。
私服姿の朝比奈は、黒っぽいジーンズに七分袖のカットソー。その上にロールアップシャツを羽織っている。
まるで雑誌から飛び出してきたみたいな格好は、朝比奈にとても似合っててまるで違和感がない。
多分その所為で、私服だった事に気付かなかったんだと思うほどに。
俺の小さな声に反応した朝比奈が歩きながら振り返ったのに、「なんでもない」と首を振った。
…そうだよな、謹慎中にわざわざ制服に着替えるわけないよな。
しかもいつもの寮の自室じゃなくて、この一週間は無限の部屋に寝泊まりするんだ。
着もしない制服をわざわざ持参するわけがない。
「…どうした?」
「え?」
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