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…10。








「っ、…翔汰…?」
「……ごめん。このままじゃ、ダメ?」

「……。」



さっきは関係ないとか言ったクセに、虫のいい事を言っている自覚はある。
しかも、生徒に甘えちゃ駄目だってわかってはいるんだけど、どうしても何かに縋り付きたくなる時だってあるんだ。



何も答えなかった朝比奈の、俺を抱き上げる手に力が入った気がして、ホッと息を吐いた。

何だかさっきよりも大きな歓声が聞こえてきたけど、きっと無限の事だろうと思った俺は、聞こえてくる声を出来るだけ聞かないふりをしながらゴールに向かって進んでいく。






『―さて、トップを走るのは緑チームの朝比奈選手と原田先生のラブラブカップルです!』

『突然のお姫様だっこにも驚きましたが、どうやら二人の世界に入っている様子です。
しっかりと抱き合いながらゴールに向かっています!』



まわりの盛り上がりを煽るには充分過ぎる放送もその時の俺には聞こえてなくて、聞いていればこれから起きる事件も何か変わっていたかもしれない…なんて、結局は後の祭り。後悔先に立たず。
因果応報ってやつかもしれない。





「…翔汰。」


ゴールに向かって進んでいた筈の朝比奈が止まると、そっと俺の名前を呼んだ。

顔を上げると赤面したスタッフが俺達を見てて、朝比奈に見とれてるのかな?なんてぼんやりと思いながら、朝比奈の腕から降りた。








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