…9。 「な、なに!?」 「………なんでもねぇ。そのままでいろよ。」 ただ抱き上げられていただけだったのに、今度は後頭部を掴まれて肩に押し付けられた。 「!?」 おかげでチームベンチから顔は見えなくなったけど、密着度がハンパなく増えた気がするんだけど。 さっきとはまた違う意味で恥ずかしくなってきて、今度は鼓動が早くなって困る。 このまま密着していたら朝比奈にまで鼓動が伝わりそうで、それだけは避けたい!と少しだけ体を離した。 …あ。 けど、まさかそんな行動が自分にダメージを受けさせるとは思いもしなかった。 朝比奈のずっと後ろ。 職員テントの方に、無限がいた。 どんな紙を拾ったのか、無限は夏兄の前に立つと、夏兄に何かを話してるみたいだ。 ―ツキン…、ツキン…、 胸の辺りがチクチクと痛み出したのを感じて、すぐに目をそらした。 だって借り物が人物だった場合、手を繋いでゴールしなくちゃならない。 しっかりと握られた手を直視したくなくて、必死に顔を背けたのに。 『なんと、無限先生が借りたのは理事長代理の静谷夏樹さんです!』 ついつい実況につられて視線を向けてしまった俺は、馬鹿だ。 バッチリと繋がれた手を見てしまい、苦しくなって朝比奈に抱き付いた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |