…7。
よくよく考えてみれば、さっきまでの緊張が嘘のように消えたのは、あの不良のおかげかもしれない。
元々出るかもわからない尿意だって完全に吹き飛んだし、
講堂で入場してくる生徒を眺めていた時だって、職員挨拶の事よりもどこかにいるであろう不良(仮)の事で頭がいっぱいだった。
むしろ、職員挨拶で自分は一年でなく年上で教師だと思い知らせてやろうと、そんな大人気ない事ばかり考えていたのだ。
「………何お前、んな怖い顔してんの?」
2年D組の引率を終えた無限が俺の隣に立ったのはそんな時だ。
「怖い顔なんてしてません。」
嘘。絶対目が逆三角になってるはず。
ふーん、なんて息を吐きながら、それでも俺に視線を送る無限を睨み付けると、
「何ですか!?」
小声だがたっぷりと怒気を含んで言い放った。
いつもなら直ぐからかってくる無限だが、今日の俺は一味違う!負ける気がしない!
しかし、そんな俺の気持ちに反して眉を下げた無限は、
「…悪かったよ、んな怒んなよ。」
「?」
…はい?なんで謝ってんの?
いや、確かに怒り口調だったけどさ。
突然の、しかも無限からの謝罪に驚いていると、
「髪、似合ってるぜ?でもまあ、了承得ないでそんなにしたのは確かだし…」
バツの悪そうに頭を掻く無限は眉を下げて顔を歪めると、耳元で囁いてきた。
「…嫌うなよ。」
「!?」
…デ、デレたー!
ちょっ、デレてきたよ!
確かに髪の事は怒ってたけど、別にそこまでじゃない。
いや、教師らしくないって怒ってはいたんだけど、俺が気付かなかっただけで周り見たら結構みんなそんな感じだし?
何より、無限がこんなに気にしてくれてたなんて思ってもみなかった俺は、突然のデレ具合に耳が熱くなってしまった。
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