…6。
「!?」
…わっ!この人、凄くかっこいい。
さっきまでの不機嫌で近寄りがたい雰囲気が一変。
笑うと少し下がる目尻と綺麗な形で弧を描く唇は静兄とは違う意味で綺麗だ。
モテそう!凄く!
一瞬、誰かに似てる気がしたが誰だろう。
不意打ち笑顔に思わず見とれていると、
「…なんだ迷子か?」
口から紡がれる声が予想以上に優しくて、心臓がどくりと鳴った。
それは別に一目惚れとかそういうのじゃなくて、ほら、芸能人とか見て思うようなそんな感情だ。
ついつい、お得意の受け攻め属性分けも忘れてガン見していると、不良(仮)の手が俺の頭に伸びてきた。
…うわっ、あ、へ?
多分殴られたりはしないと思うが反射的に目を瞑ると、
ふわ。
不良(仮)が俺の髪を優しく撫で始めた。
…うわー!うわー!うわー!
実際には撫でられたわけじゃなく、走った所為で乱れた髪を直されたのだが、とにかくもう赤面するくらいに一つ一つの動作が色っぽいのだ。
こう、洗礼された無駄のない動き?
さすがに金持ち学園というべきか、見た目は100%不良なのに不思議な感じだ。
思わぬ接触にカチンコチンに固まったままの俺に気付いて、不良(仮)はふっと笑うと、
「駄目だろ、入学式ぐらいちゃんと制服着なきゃ。」
…はい、すみま……へ?
「一年の教室は3階だぞ。急いで行かなきゃ遅刻だぜ?」
…はい?
じゃあな、と頭をポンポン叩き、去って行く後ろ姿を眺めながら、俺は言われた言葉をなかなか理解出来ずにいた。
…制服?3階?入学式?
「…………………………っ!
俺は一年じゃないっ!」
酷い!失礼だ!
あろうことか一年生に間違われた!
怒りなんか通り越して最早泣きたい。
抗議もしてやりたかったが、コンパスの違いなのか既に姿は見当たらなかった。
…くそー!
お前なんか天然たらしの不良攻め、と見せかけて受けだ!受けにしてやる!
冷静に考えると馬鹿らしい悪口を胸の中で吐き出しながら、荒い息で来た道を戻る事にした。
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