…8。
…が、ガラ悪っ!
さっきまでの可愛らしいチワワ面をがらりと変えた一年生に驚いた。
「…ホント、なんで僕がお前なんかとキスしなきゃならないんだか…。」
…しかも理不尽!
むしろこっちの台詞ですけど!
口を拭ってスッキリしたのか、俺を見下ろして馬鹿にした笑みを浮かべた一年生は、
「あの人とのキス、返して貰ったから。」
……は?
「ちょっとキスして貰ったぐらいでいい気にならないでよね?本当は迷惑してんだから。」
…は?え?
「これ以上あの人に付きまとうならなら容赦しないから…」
にっこりと微笑んだ一年生は優雅な足取りで出口に向かうと振り返って俺を見た。
「…覚悟しといてよ。」
冷たく低い声にヒヤリと背筋が冷える。
「失礼しました」と挨拶をして出て行く一年生を呆然と見送った俺は、今起きた事が理解出来なくて混乱していた。
…キス、されたんだよな?
唇に残った生々しい感触と、明らかに向けられた悪意に恐怖する。
…付きまとうって何の事?
俺は、自分で誰かに付きまとった記憶なんてない。
そういえば、キスを返して貰ったって言ってた。
キスって言われて思い浮かんだのは無限と朝比奈だけど、どちらからといえば無限の方が印象が強い気がする。
…勿論、朝比奈も強烈ではあったけど。
なんせ無限には、初めてここに来た時からピンキリだけど三回も唇を奪われているんだ。
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