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…9。





「っ、…もう!」



八つ当たりみたいに乱暴に膝掛けを拾うと、それでも丁寧に畳んで椅子に掛けた。



…けど、誰?



例えばそれが上着とかだったら、誰が来たのかわかったかもしれないが、あいにくこの膝掛けは俺のだ。


寝ていた俺に掛けてくれたって事だよな。
じゃあ、頭を撫でたのもその人?



…もしかして、「行かないで」って口走ったのも、現実?



思い当たった仮定に真っ赤に顔を染めると、余りの恥ずかしさにしゃがみ込んだ。



…恥ずかしい!恥ずかし過ぎる!

何だよ「行かないで」って!
何言っちゃってんの俺!



「あぁー!」



恥ずかしさに奇声を上げて唸ると、大きく溜め息を吐いて座り込んだ。



―トントントン、


その瞬間、控え目なノックが聞こえてきたもんだから、余りのタイミングにビクッと肩を揺らすと、



「…翔?」


ドア越しに聞こえてきた夏兄の声に急いで入口に駆け寄った。


「夏兄!」


いきなり開いたドアに驚いて、でも直ぐに柔らかな笑みを浮かべるのは、入学式以来会っていなかった夏兄こと静谷夏樹だ。



「久しぶり!どうしたの?」

「うん。新歓の様子を見に回ってたんだけど、ついでに翔の顔も見とこうかと思って。」



相変わらず涼やかなイメージでデジカメを取り出した夏兄は、どうやら新歓の様子をカメラに撮って回っていたらしい。



「来年の入学案内に使うんだ。」
とか、本来なら業者に頼むような夏兄の仕事じゃ無さそうなのに凄く楽しそうに笑っていた。






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