…9。
…血管が切れるかと思った。
「すみませんね、童顔で。」
からかうような口調にピクピクとこめかみ辺りを引くつかせて、それでも何とか笑顔を作ってみたが、人のコンプレックスを堂々と言い放つのは駄目だと思うよ。うん、絶対。
そんな俺の気持ちを察したのか、無限はにっこりと微笑んで俺の頭をぐしゃぐしゃに撫でた。
「…うわっ、や、めて下さい…」
わしゃわしゃと犬でも撫で回すような仕草に、せっかく大人っぽさを意識してセットした髪が台無しだ。
特に初日という事でいつもより気合いを入れていたから尚更である。
苛立ちに抗議しようと口を開くと、声を出す前に無限に遮られた。
「そんなに簡単に顔に出しちゃ駄目だぜ?
ガキなんて直ぐにつけあがるんだから…。」
「え?」
その言葉に自分が試されていた事に気付いた。
つまり、こういう状況が現実に起こり得るって事だ。
一丁前に文句を言おうとしていた自分が恥ずかしくなって下を向くと、
「…すみません。」
自分の態度を謝った。
でも無限は気にしていないみたいだ。
「いや、かまわねぇよ?
まあ、とりあえず可愛いとか童顔とか、1発ヤらせろとかはほぼ絶対に言われるから、海の様な寛大な心で受け流せ。…俺みたいに?」
なんかやたらと格好良く決められたのだが、一部激しくスルーしたい言葉があった気がする。
それと同時に聞いてみたくも、ある。
「……あの…、」
コソコソと上目遣いで無限を見ると、「何?」と楽しそうに首を傾げてきた。
「やっぱり、あるんですね…そういうの。」
話では聞いてたけど、やっぱり冗談であって欲しい。
…ほら、二次元は二次元だからいいのであって、現実には遠慮したいものだろ?
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