『オレ×オレ』
…18。
途方にくれていると、遊佐が何かを握っていることに気付いた。
何だろう。
きつく握られた手をゆっくりと広げると、
そこにあったのは、
遊佐から貰った腕時計だった。
カッと、顔が熱くなる。
遊佐がこれを持っているって事は、俺が使っている事に気付いたという事。
そんなわけ無いのに、
遊佐への気持ちを見透かされているみたいで恥ずかしかった。
カッコ悪い。
物凄く、今更だが…。
…とりあえず、煙草を吸って落ち着こう。
スパー…
大丈夫。
バレてない。
自分に言い聞かせた。
もし、
時計の事を言われたら、軽く流せばいいじゃないか。
“ああ、有り難く使わせてもらってるよ”
そんな感じに軽く…。
ドサッと、
遊佐が床に倒れた。
!!
びっくりした…。
「遊佐?起きたのか?」
返事がない。
まだ寝てるのか?
覗き込んでみると、規則正しい寝息が聞こえた。
「…普通起きるだろ。」
顔にかかった髪をどけてやると、
その無防備な顔に笑みが零れた。
うっすらと生えた髭。
触るとチクチクする。
俺も一緒か…。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!