『花束を君に』 7*5 「あの人…私の事、本当に好きだったのかな? 本当は売り言葉に買い言葉で、結婚しちゃっただけだったりして…」 ポツリとこぼした瞬間、私の中で何かが切れた。 「好きに決まってる。当たり前でしょ!? どこの世界に好きでもない人と結婚する人がいるのよ! 好きに決まってるじゃん! 好きでもない人の為に、毎日本を借りる? 部屋を埋め尽くすくらいに花を買う!? いい加減にしてよ! 私に…私に自慢したいの!?」 二人の絆が強すぎて痛い。 お前の入る隙なんてないと、言われているみたいだ。 分かった。 もう、分かったから!と泣きながら叫んだ私に、香苗さんは笑みを返した。 「なんで?なんで笑ってるの?」 「智央の事、本当に好きなんだなと思って。」 柔らかい笑みの後、寂しそうに言った。 「私、もうすぐ死ぬの…。 たぶん、あと一か月も保たない。」 改めて言われなくても、目に見えて弱っている事が分かる。 さっきの勢いはどこにいってしまったのか、思わず閉口してしまった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |