『花束を君に』 7*3 「見せつけようと思って。 “智央の愛してるのは私よ”ってね。」 え…? 思いがけない回答に固まってしまう。 「…嘘よ。そんなに悲しい顔しないで?」 真っ赤になって下を向く。 そんなに顔に出ていただろうか。 「…貴女が智央を好きな事はすぐに気付いたわ。 最近の本。貴女が選んでくれてたんでしょう?」 「…はい。」 今更はぐらかしても仕方がないだろう。 正直に答えると、深田さんの奥さんがニヤッと笑った気がした。 「だって、恋愛小説ばかりなんだもん。」 …そうだったっけ? また赤くなって俯く。 俯いた顔を上げさせる様に、奥さんは私の手を握ってくると、その冷たさに驚いた。 …細い、白い手。 儚く、すぐに壊れてしまいそうな。 「カスミちゃんって呼んでいい?…私の事は、香苗って呼んで?」 一体どうしたいのだろう。 困惑していまう。 「…今日ここに呼んだのは、カスミちゃんにお願いがあったの。」 聞いてくれる? 訪ねた顔は、どこか有無を言わさない空気を醸し出している。 [*前へ][次へ#] [戻る] |