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『花束を君に』
4*2

入口にカスミ草が並んでいる。
カスミ草か…。
私と同じ名前のカスミ草は誕生花でもある。
大好きな花だ。

カスミ草の花束とか持った男の人とかいたらイチコロかも。
誰か私にプレゼントしてくれないかな。

空しい想像に苦笑いして自分で買う事にした。
世の中そんなに甘くない。
カスミ草だけの花束なんて買う人はいないだろう。
…普通、脇役だもんね。

渡ろうとした時、見覚えのある人が花屋に入って行った。
「…深田さん…」
どうして…?
会いたくなかった。
眩暈を感じてその場にしゃがみ込んだ。

深田さんは慣れた感じに花束作って貰うとそれを持って店を出てきた。
私に気付いた様子は無い。

手に持った花束は、私が欲しがったカスミ草だった。

何という事だろう。
心臓を握りつぶした様な衝撃を受けた。
追いかけて行って、どうしてと問いたかったが、そんなの理不尽だと分かってる。

泣きたくなった。

通りを進んで行く深田さんの後ろ姿を、私はいつの間にか追いかけていた。



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