『揚羽蝶』
七/三
…え?
…何だって…?
揚羽を?
いきなりの言葉に息が止まりそうになった。
「…な、…え?
…どうして、揚羽を?」
「本人の希望です。」
僕は立ち上がると、部屋の外へ出ようとした。
確かめなくては!
戸に手を掛けようとした時、先生に腕を掴まれた。
「冷たい言い方ですが、
君は、初めてあった“自分より弱い者”に勘違いしているだけです。
…それは恋じゃない。
ただの利己主義ですよ。」
利己主義?
…違う!違う!違う!
大きく首を横に振ると、泣きながら言った。
「そんな事ない!僕は揚羽が好きだ!愛してる!
…先生だって、言ってくれたじゃないか!“揚羽は僕が好き”って!」
駄々っ子の様に泣き叫ぶと、先生に諭された。
「康介君。
君は、人の人生を背負うにはまだ早過ぎる。
ここに彼女がいる事が、本当に彼女の幸せだと思うのかい?」
「思うよ!僕が幸せにする!」
「この体で?」
心臓を指さされ、黙るしか無かった。
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