『揚羽蝶』
四/四
僕はお茶を注ぎながら、とりあえず一番気になっていた事を聞いてみた。
「…どこから、ここに入ったの?」
この辺りは全て、家が管理している土地の筈だ。
そして、ここは僕の為だけに建てられた離れ。
安々と出られない様に作られた、“檻”。
彼女は食べていた手を止めると悲しそうな顔で口を開いた。
「……!」
?
様子がおかしい。
口をパクパクさせて喉を押さえている。
「…どうしたの?」
「…!」
何か言おうとしているのは確かだ。しかし…
ふるふると首を振ると、泣きそうな顔で彼女は俯いてしまった。
「…話せ、ないの?」
こくん。
頷いた途端に涙が零れた。
…困った。
慌ててハンカチを探したが、無い。
仕方ないので寝間着の袖で拭くと、彼女が少し笑った気がした。
…!
可愛い。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!