『揚羽蝶』 四/三 とりあえず、このまま互いに固まっているわけにはいかないだろう。 小さく手招きすると、 「大丈夫ですよ?ここには僕しかいません。」 そう、笑ってみせた。 「…」 …駄目? おかしいなぁ。本には笑えば笑い返してくれるって書いてあったんだけど…。 「…お腹、空いてませんか?」 今度はご飯で釣ってみた。 「…(こくん。)」 彼女は頷くと、ゆっくり部屋から出てきて僕から少し離れたところに座った。 おお。 ちょっと、感動…。 おにぎりの乗った皿を差し出すと、一つを取ってあげた。 ちょっとためらっていたが、 「どうぞ。」 と促すと勢いよく食べはじめた。 …凄い。 あっという間に一つ平らげ、もう一つに手を伸ばしている。 余程腹を空かしていたのだろう。 その食べっぷりは凄まじく、見ているだけでお腹がいっぱいになってしまいそうだ。 [*前へ][次へ#] [戻る] |